2011年01月20日

必読本 第948冊目 Kitano par Kitano 北野武による「たけし」

必読本 第948冊目

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Kitano par Kitano 北野武による「たけし」

北野武(著), ミシェル・テマン(著), 松本百合子(翻訳)

¥ 1,680

早川書房

単行本: 357ページ

2010年7月10日 初版


●栄光と挫折、家族、女、映画、メディア、政治、裏社会、そして日本の未来について。

フランスの敏腕ジャーナリストによる5年にわたる徹底取材に、北野武がすべてを「告白」した。

「世界のキタノ」の知られざる内面をえぐる迫真のドキュメント。

●サザンのアルバムタイトルでも有名な東京都港区キラー通りで、

たまたま近所に住んでいるという縁により、日本の大スター北野武と出会ったフランス人ジャーナリスト。

異国人のインタビューの申し出を、たけしさんは快諾する。

インタビューの実現には2年も待たされるが、一旦開始されてからは、

旧知の間柄のように、様々な話を遠慮なく披露してくれる。

 5年にも渡る交流の中で、たけしさんは、生い立ちから、

テレビ界、映画作品、絵画、女、カネ、日本の問題点などを赤裸々に語っていく。

我が国のマスコミでもなかなか語られない、

「北野武」「ビートたけし」の実像に迫った傑作翻訳本。

●たけしさんは、映画監督として海外の有名な映画賞を沢山受賞してから、

欧米、特にイタリア人、フランス人の知己が格段に増えたようですが、

この本のインタビューを行った著者にも、あたかも、小学校時代からの親友に対するかのように、

レストランで高級なワインを気前よく何本も振る舞ったり、

よっぽど気の置けない親友以外は招き入れないはずの自宅まで招待したりなど、

下にも置かない歓待ぶりでもてなす。

完全に相手のことを信用していなければできるものではない。

詳細は記されてないが、おそらく、レストランで行われたインタビューでの勘定も、

ほとんど、たけしさんが支払っていたはずだろう。

フランス人ジャーナリストの質問を逐一同時通訳していったのは、

たけしさんの弟子として、たびたびテレビにも登場する、あのゾマホンさんです。

●たけしさん関連の本は、このブログでもかなりの数を紹介してきましたが、

既刊本でもほとんど語られていない意外なエピソード、

あまり口外したくなかっただろう悲しき秘話がかなり出てくることにまず驚かされる。

個人的には、少し成功してから浅草の師匠深見千三郎の元に凱旋し、

御馳走を振る舞って小遣いまで渡したのだが、泥酔した師匠は、

その小遣い銭で買ったタバコの不始末が原因で火事を起こし、悲しくも焼死してしまう。

自分の好意がアダになり、師匠を失ってしまったという自責の念に

いまだに苦しんでいるということや、

世界の黒澤明に見初められ、色々と貴重な品を贈られたり、教えを授けられたりしたので、

いまだに感謝をしているという話や、

若い頃、相性ピッタリの運命の女性に出会うが、なぜか別れてしまったという話が特に印象に残った。

世間を驚かせた、例のフライデー事件、バイク事故の詳細にも突っ込んで語られております。

 政治、経済、マスコミなど、日本社会は、あらゆる部分で、闇勢力が糸を引いていて、

その影響力を無視することは絶対にできないということを語った部分にも

非常に興味を引かれました。

ワインのほろ酔い加減もあるのか、

たけしさんは、本当に細かいことまで、遠慮なく語り尽くしております。

●又、最新作の「アウトレイジ」以外の、

すべての監督作品や、出演作品の裏話、思いを大胆に語ったという意味では、

「キタノ映画」を知る上での、一級の資料ともなりえる本です。

特に紙数が多く割かれております。

ただ、本書の唯一と言っていい難点は、翻訳本ではよくありがちなことですが、

原書から一部割愛されている箇所があるらしいということです。

個人的には、同時代のお笑いのライバルである、

さんま、タモリ、ドリフ、萩本欽一などへのたけしさんなりの見方についても

聞いてみたかったという思いがあります。

先日逝去された、「ひょうきん族」のプロデューサー横澤彪さんや、

テリー伊藤、高田文夫、自分の2人の子供への言及がなかった(あるいは、少なかった)のも残念です。

●結論として言えば、

数奇な生い立ちに改めて感動するとともに、

相も変わらないたけしさんの勉強熱心さ、博覧強記ぶりに溜息が漏れるような本です。

たけしファンであるなしに関わらず、文句なく楽しめます。

テレビでは毎日のようにハチャメチャなことばかりして笑いをとっているたけしさんですが、

現代最高のインテリ、偉人の一人であることを、読後は痛切に思い知らされますね。

文化大臣としての国政参加を裏では引きも切らずに要請されているようですが、

晩年はどんな姿で世間に名を轟かすのでしょうか。

大いに期待が持たれます。

 

 【マストポイント】

@「ぱっと見でみんなが好きになるようなおネエちゃんているじゃない。

そういう子とつきあいたいと思ったことは一度もないね。

あと、家柄の良い子ともね。つきあったとしたら、めちゃくちゃ退屈だったろうね。

俺はいつも自分と同じような生まれの娘たちとつきあってた。

たぶん親から、『自分にふさわしくない欲望は持ったらいけない』って言われて育ったからだと思うよ」

A「たしかに、俺は金を稼いでいる、すっごいでかいカネを稼いでいるけど、

ほとんどがテレビから。画面にいっぱい登場することで、大金を得ているわけ。

なんたって民放のセットやスタジオに、一週間ほとんど出ずっぱりなんだから。

でも、まったく疲れないね。どの仕事も楽しんでやってる。

仕事中毒だね。でも、自分を止められない。

テレビは、不安から解放してくれるドラッグみたいなもんだから」

B「これは心から望んでることだけど、

日本人はもっと個人個人が自分で判断する感覚っていうのを磨いていかないと

だめだと思うんだ。もっと自分自身で考えなきゃ。

それができないで、いつまでも外国人の考えたり言ったりすることに頼り切っていると、

いつか植民地になっちゃうよ」

(以上本文より。一部改変)


【著者紹介】

北野 武
1947年1月18日、東京生まれ。映画監督、俳優、コメディアン。浅草フランス座での修業時代を経て、漫才コンビ、ツービートを結成。漫才ブームを牽引し、テレビ界での地歩を確立した。1989年に映画界に進出、『その男、凶暴につき』で鮮烈な監督デビューを飾る。その後、次々と刺激的な作品を発表し、世界各国で高い評価を受ける。『ソナチネ』(1993)はイギリス国営放送BBCの「21世紀に残したい映画100本」に選出。『HANA‐BI』(1998)がベネチア国際映画祭金獅子賞、『座頭市』(2003)が同映画祭銀獅子賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝く。

ミシェル・テマン
ジャーナリスト。フランスの日刊紙リベラシオンの日本特派員。 



posted by miura at 18:47| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 自伝・一日一話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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