2011年02月09日

必読本 第954冊目 夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

必読本 第954冊目

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夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

村上春樹(著)

¥ 1,890

文藝春秋

単行本: 512ページ

2010年9月30日 初版


●13年間の内外のインタビュー18本を収録。

なぜ書くのか、創作の秘密、日本社会への視線、走ることについてなどを語りつくす。

●徹底したインタビュー嫌いとして知られ、

表舞台に出ることを拒否することでも有名な村上春樹氏が、

国内外のマスコミや一般読者に向けて行った貴重なインタビューを一冊にまとめた本。

私自身、若いころと違って、最近はめっきり小説と名がつくものを

読むことから遠ざかってしまったのだが、

雑誌ananに連載中の『村上ラヂオ』に代表される、軽妙な語り口の

氏のエッセイを読むのは昔からすごく好きだったので、

図書館から借りて読んでみました。

●手に取ってから驚いたのだが、ちょっとした辞書はあろうかというような

500ページを超える分厚さ。 

初めに告白しておくと、一旦ページを開いてからはその面白さに引きこまれ、

寸暇を惜しんで読んでいたのだが、

やはりちょっとやそっとでは読破できないその分量がネックになり、

返却期限が来てしまって3分の2ほどしか読めなかった。

借り直して最後まで読み切るつもり。

●18本のインタビューの中で語られることは非常に多岐にわたる

(海外でも人気が高いこともあり、

日本よりも海外のメディアからのインタビューが大半なのが特筆に値する)。

各作品が誕生したきっかけや、完成するまでの経緯、

登場人物に託した思いなど、創作上の秘密を語った部分はもちろん、

子供の頃に小説を読み始め、青年期になって実際に小説家として

デビューするまでの変化、

影響を受けた作家の話、音楽、映画、運動など、ごく趣味的なこと、

普段のスケジュールなど日常生活の姿、頻繁に海外生活を送りつつも、

常に執筆上では日本的なものを意識していること、

小説と翻訳の仕事の進め方の違いなどなど、

これほど有名であるにもかかわらず、謎に満ちた超人気作家、

村上春樹氏の実像を非常に細かい所まで知ることができる。

●人の話を聞くことは大好きだが、話すことは苦手だし、

自分本来の仕事ではないと断言されている村上さんだが、

一旦インタビューを受けると決めてからは、

各国の多様なインタビュアーの質問の数々に、

とても誠実かつ饒舌に話されているのが非常に意外な印象を受ける。

あまり答えたくないであろう質問や、回答困難な質問に対しても、

適当に流すことなく、実に冷静かつ謙虚に対処する。

又、こんなことまで答えるのかというようなごく私的なことも、

ためらうことなく吐露されている。

私が予想するに、実際の村上さんという人は、

極端な人嫌いの、寡黙で偏屈な変人インテリ作家というよりは、

むしろ、自分がちょっと普通の人とは違うタイプの特殊な人間であることを十分自覚し、

そういうタイプの人間がいかにしてこの現代社会の中で、

まわりとトラブルを起こすことなく、そして自らも不満やストレスを感じることなく

快適に生きていくには何がベストなのかを、十全にわきまえて生きている

スマートな知識人、という感じの人間なのではなかろうか。

本書を読んで、そんな印象を受けた。

●又、改めて言うまでもないことだが、

語彙の豊富さ、文体の流麗さ、博覧強記の知識量、

森羅万象に対する観察眼の鋭さ、記憶力の良さにも驚嘆させられる。

こんな体験をすることはめったにないのだが、

読み進めるごとに、村上さんに感化され、自分がドンドン賢くなっていくという不思議な錯覚さえ感じる

(また、同時に、文章が幼稚すぎる本、内容が低レベルで愚にもつかない本ばかり読んでいたり、

テレビや漫画ばっかりの生活を送っていたら、

間違いなく愚鈍な人間になってしまうということもなぜか痛感させられる)。

本書は、村上氏のファンならば絶対の必読書ですが、

特にそうでなくても、色々な意味で得るところの多い本です。

最近、本業である小説以外の村上氏のサイドワークをまとめたような本が

続々と出版されているようですが、

入手する機会があったら、又書評したいと思っております。

 

 【マストポイント】

@「僕は読書少年、読書青年ではあったけど、

文学青年ではなかったんですよ。

自分が小説を書きたいと思ったことはほとんどなかったんです。

だから十代から二十代にかけて文学的手法とは何かということに対して

全然悩まなかったんです。

小説を書きたいという人間は、小説はいかに書くべきかというところで

読書体験とは別の思考をしますよね。

僕にはそれがないんです。僕にとって読書というのは純粋な悦びでしかなかった」

A「作家にとって書くことは、ちょうど、目覚めながら夢見るようなものです。

それは、論理をいつも介入させられるとはかぎらない、法外な経験なんです。

夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」

B「自分の目指している方向はおおむね間違っていないはずだという手応えは

常にあったのだが、それでもやはり厳しい時期は数多くあった。

人生とはたぶんそういうものなのだろう。

あとになってみれば『ああ、そうか、そういうことだったのか』と

腑に落ちるのだが、その時点では何がなんだかよくわからない。

でもよくわからないからこそ、人生にはきっと意味があるのだろう。

よくわけがわからないからこそ、これからどうなるのか先が見えないからこそ、

人は必死になってそこから何かを吸収していくのだ」

(以上本文より。一部改変)


【著者紹介】

村上春樹

1949年1月12日、京都府京都市生まれの兵庫県芦屋市育ち。住職の息子で国語教師でもある父と、大阪の商人の娘である母の間に生まれる。兵庫県立神戸高等学校卒業。早稲田一文に入学。その後演劇映像専修へ進む。大学在学中に陽子夫人と結婚結婚後、国分寺市に転居し、大学に在学しながらジャズ喫茶を開業する。大学を7年かけて卒業後,閉店後の店で小説を書き、1979年『風の唄を聴け』で群像新人文学賞を受賞しデビュー。1981年には作家専業で生きていく決意を固め、ジャズ喫茶を廃業した。全共闘世代、団塊の世代を代表する作家であるが、政治活動にかかわることを避け、全共闘運動からは遠く距離を置いている様子が、作品の端々からうかがわれる。1987年『ノルウェイの森』が、空前の大ベストセラーとなり、一般的にも認知される。その後、出せば必ず売れる作家の1人に数えられるようになった。作品は韓国、米国、台湾などでも絶大な人気があり、1980年代以降の日本文学、現代文学を代表する最も評価の高い文学者の1人である。



ラベル:村上春樹

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