2012年02月23日

必読本 第1019冊目 潜入ルポ 中国の女

必読本 第1019冊目

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潜入ルポ 中国の女

福島香織 (著)

文藝春秋

¥1,575

単行本: 232ページ

2011年2月22日 初版



●政治的にも社会的にも自然環境的にも過酷な国で、

女性に生まれることは、決して幸福とは言い難いのに、

それでもたくましく、体を張って生きて、恋し、子供を産み、戦っている女たち。

元女性北京特派員が凝視・直視・驚嘆・取材した「中国女」の全て。

●今月頭に中国北京を訪問したこともあり、その影響で手にした本。

香港や北京に駐留し、生の中国の現状に精通した、

元新聞記者である著者がレポートする、中国女性の真実の姿。

●日本でもよく知られるように、

中国大手マスコミは、国直轄の機関であることもあり、

自国に不利な情報、ネガティブな情報はほとんど報道しない。

かなり強力な情報規制、検閲、出版物の発禁が行われている。

よって、どこの国でも必ず普通に目にすることができる、

売春、エイズ、麻薬などの犯罪組織、出生やセックスに関する問題、

政治や宗教がらみのニュースなどの真相を、

一般の人間が知ることは容易ではない

(東スポなどの暴露系、エログロ系の夕刊紙、

時の為政者、有名人などを平気でこき下ろし、

民衆の不満を解消するビートたけし的な存在が、

現代中国には存在し得ない)。

●本書は、中国滞在歴も長く、現地人たちとのコネも豊富な

女性ジャーナリストの著者が、

現在の中国の“ダークサイド”を果敢に取材して回ったものである。

売血のせいでエイズに罹患しながらも、無謀にも子供を出生した“エイズ村”の女性

(国籍を詐称して潜入取材するのだが、それがバレない語学力、演技力がすごい)、

貧困から逃れるために地方から都市部に売春婦として働きに来る若い女性たち

(売春婦の女の子たちの歓心を買い、友達同然にプライベートまで仲良くなる。

日本のキャバクラの女性が、閉店後にホストクラブで鬱憤を晴らすように、、

売春婦が売春夫を買いに行くなどの話はショックを受けること必定)など、

冒頭から息を呑むような悲惨な女性たちが続々と登場する。

北京、上海、広州などの沿岸部の都市では、

華やかなニュースしか報道されないことが多いが、

ちょっと離れた内陸部では、いまだに前近代的な悪習、迷信がはびこっていたり、

ちょっと信じがたいような貧困格差や食糧難が根強く存在していることがわかり、

やはり、大きな衝撃を受けます。

●前半は、そういうどぎつい状況で働いている闇の女性たちを取材しておりますが、

後半では、一代で巨万の富を築いた企業家や、

流行作家、漫画家、NPO主宰者、人権活動家などの、

華やかな舞台で活躍されている女性たちの姿を

詳細にレポートしてくれております

(ただ、公安から拉致監禁されて、有名な収容所に連れて行かれ、

暴力的な取り調べを受けたチベット問題活動家の話は、やはり恐怖を覚えます。

一党独裁が原則の中国では、下手に政治問題、人種問題を論ずることは、

大きなリスクを負うことになることを痛感させられました)。

●中国に留学、赴任する予定の方は、

超近代的なビルやブランドショップが続々と建設される都市部の華やかな姿の裏に、

先進国では到底考えられないほどに衛生観念が低く、無教育な「夜の女性たち」、

一人っ子政策の負の面と言える、人身売買、幼児誘拐が厳然と存在するということ、

携帯電話、メール、スカイプでも、やろうと思ったら平気で

盗聴、傍受されるという公安の情報収集能力の凄さなどを

本書で事前に学んでいった方がよろしいかと思います

(個人的には、好意を持っている風を装って、

巧みに日本男性のお金をかすめ取る中国女性の手口、

男児を産むことに固執するが、離婚することには意外に抵抗が少ない結婚事情、

などを知ることができたのが収穫だった)。

●著者には、是非本書で取材しきれなかった人たちを

レポートした第2弾を期待したい。

たとえば、就職難から、成金男性と結婚したり不倫したりするインテリ女子大生、

日本のアニメ、歌手、小説に熱狂する女の子、

ブランドのコピー商品を製造販売する組織、

アイフォーン製造などで過酷な労働を強いられる工場勤務者、

日本人男性を騙して大金を得た女性などを潜入レポートしてもらいたいものです。



※今回の【マストポイント】は、割愛いたします。



【著者略歴】

福島 香織
ジャーナリスト。1967年奈良市生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社に入社。大阪文化部などを経て上海・復旦大学に語学留学。2001年から産経新聞香港支局長に赴任、2002年に香港支局閉局にともない中国総局(北京)に異動。2008年まで常駐記者を務めた。帰国後は東京政治部で麻生太郎政権を取材。2009年に退職し、中国関連分野でフリーの活動を開始。







ラベル:福島香織
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2012年02月13日

必読本 第1018冊目 ボクの音楽武者修行

必読本 第1018冊目

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ボクの音楽武者修行

小澤 征爾 (著)

新潮社

¥420

文庫本: 244ページ

1980年7月25日 初版



●40年前に「世界のオザワ」と言わしめた中田よりもイチローよりもスゴイ挑戦。

「外国の音楽をやるためには、その音楽の生まれた土地、

そこに住んでいる人間をじかに知りたい」という著者が、

スクーターでヨーロッパ一人旅に向かったのは24歳の時だった……。

ブザンソン国際指揮者コンクール入賞から、カラヤン、バーンスタインに認められて

ニューヨーク・フィル副指揮者に就任するまでを、

ユーモアたっぷりに語った「世界のオザワ」の自伝的エッセイ。

●今月頭に中国に観光旅行に行き、

あらためて外国文化を味わう興奮や、異国の地での人々と交流することの感動を

痛感してきました。

その関連で、何か旅行記を無性に読みたくなり、

色々と探していたときに出会った本。

最近、作家の村上春樹さんとの共著でも話題になっている、

名指揮者、小澤征爾の音楽修業時代を綴った大ベストセラーエッセイ。

よく推薦図書として挙げられる名著ですので、

学生時代に読破されたことがある方も少なくないでしょう。

●海外渡航が今よりもずっと困難だった時代に、

若い小沢はとてつもない計画を立てる。

音楽で身を立てるために、

スクーター1台だけを貨物船に持ち込んで、

ヨーロッパ中を見聞して歩こうというのである。

昔は、スクーターを購入するにしろ、

海外に渡航するにしろ、今とは比べ物にならないぐらいの

高額な費用やややこしい手続きを要したはずだが、

人脈に恵まれたのか、その人懐こい笑顔に皆が魅了されるのか、

色々な機縁に恵まれ、ヨーロッパに渡る船に乗船することに成功する。

信じがたいことだが、船内での飲食費も全くのタダ。

日本人の若者が珍しかったのか、外国人の船員たちに非常に可愛がられ、

手厚いサービスを受けたと言うから、これは小沢さんの人徳としか言い様がない。

●何か確固たるコネがあったわけではないのに、

果敢に外国に渡ったという小沢さんの冒険心の強さは今更ながら感服するが、

偶然開催されているコンクルールでは、ものは試しと大胆にチャレンジ。

それに入賞するために、寝食を削ってでも用意周到の準備をしていったという。

後年、世界的な名音楽家との知遇を得、トントン拍子に出世していくが、

やはり、小沢さんのサクセスストーリーは、ただの偶然、幸運だっただけでは

片づけられない。

人並み外れた「努力の人」だったわけである。

●本書は、学生の推薦図書として挙げられるということは

先述したとおりだが、

他に、小沢さんに見習いたい点として、以下のことが言いうると思う。

まず第一に、物怖じすることなく、何でもチャレンジしていることである。

誰が日本で原チャリを無償で譲ってもらって、ヨーロッパ中を横断しようと

計画するだろうか。

親や友人に話せば、絶対に反対されるようなことでも断固として挑戦している。

スポーツや芸術方面で世界を目指すというお子さんをお持ちの親御さんも

是非とも参考にされたい点だ。

●第二に挙げられるのが、いわば「人から可愛がられる力」を

お持ちであったということである。

小沢さんは、先住している日本人たちから、

家族同然のような援助を度々受けられている。

いくら同国人のよしみがあるとしても、

これほどまでに赤の他人から物心ともにサポートしてもらえるというのは、

ある種の「人たらし」の才能を先天的にお持ちだったとしか言い様がない。

このあたりの才覚も是非学び取りたいものである。

●身近に接した者しかわからない、カラヤン、バーンスタインなどの

大物指揮者の人となりを語ったエピソードや、

ヨーロッパ中を軽快にドライブしたり、スキーやパーティーで

青春を謳歌したりするエピソードなども、非常に楽しく読める。

現地の自然や文化を、独特な視点から分析してみせる

小沢さんの観察眼の鋭さも特筆すべき点。

口語体のくだけた文章と、爆笑必至の面白話が満載なので、

読み始めたら一気に読破できます。

随所に挟み込まれた写真の数々にも、青春特有の爽やかな感動、

音楽に対する力強い情熱を覚えます。

音楽、旅行好きの人、何か壮大な夢をお持ちの若者などに

捧げたい本です。


【マストポイント】

@「芸術を愛する人間の多いヨーロッパで、

なんで戦争なんか起こったのだろうか。

西独と東独の国境のあのとげとげしい空気はなんだろうか。

戦争はまだ終わっていないし、

これからも起こらないとはいえない。

どうして、もっとこの世には美しい音楽があり、

美しい花があるということを信じないのだろうか」

A「ベルリンで一番お世話になったのは、

何といっても田中路子女史だ。

外国に一度でも行った人なら誰でも感じることだと思うが、

よその国で同じ日本人から受ける親切ほどありがたいものはない。

同じ親切であっても、外国のばあいは何十倍かのありがたみがある」

B「東海道の海辺の古い宿屋に泊った時、

バーンスタインが言ったことをもう一度書いておこう。

『セイジ、おまえは幸福な奴だ。

こんな美しい国に育ったなんて…。

それなのになんでニューヨークなどに住む気になったんだい?』

ぼくも日本を美しいと思わないわけではない。

ただ西洋の音楽を知りたくて飛び出して行ったのだ。

その結果、西洋の音楽のよさを知り、

また日本の美しさも知るようになった。

ぼくはけっして無駄ではなかったと思っている。

それどころか、今後も日本の若者がどしどし外国へ行って新しい知識を得、

また反省する機会を得てもらいたいと思っている。

外国へ来ると、きっと日本が好きになる」

(以上本文より。一部改変)


【著者略歴】


小沢 征爾
1935年中国・奉天(現瀋陽)生まれ。桐朋学園短期大学卒。59年、仏・ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝。ニューヨーク・フィル副指揮者を振り出しに、トロント響やサンフランシスコ響の音楽監督を歴任。73年からはボストン響の音楽監督を務めながらベルリン・フィルや国立パリ・オペラ座にも客演。年に一度、日本でサイトウ・キネン・オーケストラの指揮をとる。2002年秋には、ウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任予定。




ラベル:小沢征爾
posted by miura at 13:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・詩集・エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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