
物語
北野 武(著)
ロッキング・オン
¥1,680
単行本:298ページ
2012年10月15日 初版
●北野武監督にとって「物語」とは何か?
『その男、凶暴につき』から『アウトレイジビヨンド』に至るまでの軌跡。
すべての映画の脚本を語った画期的インタヴュー集。
ベストセラー自叙伝、第10弾。
●本書は、ロッキング・オンの、たけしさんの自叙伝シリーズの最新刊です。
内容の大半は、自身が書いた映画脚本の制作過程裏側を
語るというものになっており、今までの自叙伝シリーズの中では、
「映画」に重きを置いた異色の本と言ってよいかと思います。
北野映画ファンの方には、撮影秘話が数多く語られているという意味で
非常に楽しく読めるはずですが、
特に北野映画に興味がなく、たけしさんの例の軽妙なエッセイを期待した向きには、
少々期待はずれとなるかもしれません。
個人的には、一般にはあまり知られていないハリウッドの裏側情報を
数多く提供してくれた「BROTHER」の話がとても面白かったので、
一読の価値はあるかと思いますが・・・。
若い頃と現在のたけしさんの写真を見比べてみるのも一興です。
●最後の方には、
日本の政治家のリーダー像やTBS系の「ニュースキャスター」のことを
おまけ的に語ってくれております。
最近の総理大臣がダメな理由を語ったり、
楽天やソフトバンクなどのインターネット企業を鋭く批判したりなど、
たけし節が本領発揮された内容で、ファンの方は大いに満足できるはずです。
前回、相方のきよしさんの本を紹介しましたが、
その本と並行して読むと、色々と新発見があり、
ツービートファン、たけしマニアにはたまらないはずです。
ベストセラーの「間抜けの構造」(新潮社)はまだ未読なので、
入手次第、書評を書きますので、今しばらくお待ち下さいませ。
【マストポイント】
@「漫才でもコントでも、一般の社会のレベルがあって、
そのちょっと先の、水先案内人のような位置で、ギャグを言うと笑うんだよね。
あまり先の方はまずいんだよ。頭がおかしい人になるから。
ちょっと先に光を当てたギャグはウケるけど。
いちばん最悪なのは遅れてる人(笑)。
お客よりも遅れたセンスでギャグを言う奴がいるじゃない。
浅草は、その典型で、「もうやめたほうがいい、こいつら」と
思う奴がいっぱいいたの。だから、「俺のは、これよりはいいよ」というのがあったから。
で、ウケだしてくると、客が自分を追い越しそうになるんだよ。
だから徹底的に逃げ回らなきゃいけねえっていうか、リードしなきゃいけないんで」
A「独裁者であるべきなんだよ、リーダーってのは。
民主主義のいちばんよくないのは、理想として、「本当の民主主義を実現しよう」って
言う奴がいるけど、そりゃ間違いなんだ。
建前上は民主主義なんだけど、実際は独裁者じゃなきゃダメだよ。
いいか悪いかを常に多数決で決めてたら、ロクなことないんだから。
国会議員は、そりゃ多数決で選ばれたんだから、それの作った内閣だから民主主義だって言うけど、
そんなバカな話はなくて。
衆愚政治になる可能性もあるわけだから。
圧倒的な独裁者じゃねえといけないんだよね」
B「今みんなこぞって、ツイッターだなんだって、いろんな情報集めんじゃない。
情報集める方は集める方でいいけど、オイラは情報にされるほうなんで。
自分でわざわざ人の情報なんか集める必要ねえし。
何にもしなくても入ってくる情報が、正しい情報だと思うから。
新聞も何も見なくて、何気なく入ってきた情報ってのがあるじゃない。
それがいちばん正しい情報なのかなって。
だから、無理に探しに行くことぁねえかなという」
(以上本文より。一部改変)
【著者略歴】
北野 武
1947年東京都生まれ。お笑いタレント。映画監督、俳優、東京芸術大学大学院映像研究科教授。テレビ番組、CMなどに数多く出演する一方、89年「その男、凶暴につき」を初監督し、好評を博す。7本目の監督作品「HANA‐BI」(98年公開)でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞したほか、国内外の映画賞を数多く受賞している。また、2010年にはフランスの芸術文化勲章の最高章コマンドゥールを授与された。