2008年06月16日

必読本 第700冊目 芸術起業論

必読本 第700冊目

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芸術起業論

村上 隆(著)

¥1,680(税込み)

幻冬舎

単行本: 247ページ

2006年6月25日 初版

 

●すべての人(=アーティスト)は起業家である!

芸術には、世界基準の戦略が必要である。

「光を見る瞬間」をどう作るか!?

サザビーズオークションで

1作品1億円で落札された村上隆が説く、超ビジネス書。

●前記したように、

その作品が、1億円以上の高値をつけて落札されるなど、

ニュースでも大きく話題にされることも多い村上隆氏。

日本のオタク文化、漫画やアニメを独自の

解釈で換骨奪胎したその作風は、

ルイ・ヴィトンとのコラボレーションなど、

海外では高い評価を受けております。

●しかし、正直なところ、

昔ながらの「芸術」という観点から考えた場合に、

なぜあんなアニメや漫画を下地にしたポップな作品に、

目の玉が飛び出るほどの高額な値がつくのか、

そもそもあれを芸術と呼ぶことができるのか、

誰か他の有名漫画家のパクリじゃないのか、

と疑問に思っている方も多いことでしょう。

●本書は、その村上さんの(作品集以外では)

ほぼ唯一とも言える著書。

相当のベストセラーになったようで、私が読んだ本も

「11刷」となっているが、2006年発売から2年にして

なぜか既に絶版となっている。

よって、古本でも高い値がついております

(ちなみに過去の作品集も、彼の実作品同様、

かなりのプレミアがついてるようだ)。

●東京芸術大学の博士課程まで修了しているだけあって、

文章は、いっぱしの小説家、評論家顔負けの語彙豊富で

流麗な文章。

口述したものを文字に起こしたのではないかと思わされる

ぐらいに、立て板に水のごとく、機関銃のような

スピード感あふれる文体である。

親交のある佐藤可士和の本でも感じたことだが、

この手の、時間に終われるような多忙な生活を送っている

アーティストの本というものは、

高速回転する脳内の動きを疑似体験できるというか、

文章に冗長なところが全くなく、

非常に小気味よいのが特徴で、一気に読破できる。

●冒頭から、「高く売れない芸術作品は、無価値だ」という、

ブーイング必至の拝金主義的論調で始まる。

今の姿からは想像できないが、

村上さんは、36歳まで、賞味期限切れのコンビニ弁当を

店の裏で恵んでもらったり、

作品を梱包するダンボールを購入するお金まで事欠くような、

典型的赤貧芸術家の生活を送っていたようである。

このあたりの金に苦労した不遇時代の経験が

骨身にしみたのか、万人から批判されても、

高値で売れる作品、海外で評価されるような作品を

生み出さなくてはならないと、終始一貫して主張し続ける。

●ホリエモン、村上ファンド、グッドウィル折口などが

世の中から葬り去られたように、

金さえあれば何でも可能だ、

金持ちになることだけが人生の目標だ、という

拝金主義一辺倒の著者は、

一時は喝采を浴びるが、最終的には、

金以外の主義主張が全くない、本来薄っぺらな人間ゆえに、

落ち目になったら一気に消えるという、

儚い運命を辿る事が多い。

芸術作品の価値を、金銭の多寡だけで一律的に

判断しようという姿勢には、おそらく同業の

金に縁のない芸術家連中からは

批判が殺到するだろうが、

一起業家として、世の中の流行を

的確に分析し、あくまでそのニーズに沿って

芸術作品を生産し、高い利益を生み出そう考えは、

我々ビジネスマン、商売人にはとても参考になる考えである。

マーケティングセンスを備えた異質の芸術家であるからこそ、

村上さんは世界でも絶賛されているのかもしれないですね。

●漫画論、美術論的に、

手塚治虫、宮崎駿、黒澤明、ウォーホル、ピカソなど、

名だたる天才クリエーターを批評したくだりや、

日本のアニメ、漫画、オタク文化

(海洋堂、岡田斗司夫なども登場する)を

鋭く分析したくだりには、特に冴えを見せます。

世界ナンバーワンのレベルを誇る日本の漫画、アニメですが、

単に子供やオタク相手の商売だというだけで

一段低く見られ、文化として考えた場合に

深い考察をされることが少ない悲運がありましたが、

目からウロコの持論を展開してくれております。

●一芸術家がなかなか才能が認められず、苦闘しつつも

最終的には成功するという自伝ものとして読んでも面白いですが、

芸術関係以外の、

「無から有を生み出す」ということを仕事にされている、

すべての業種の方にもおすすめしたいと思います。

「画期的な新商品を生み出すためには」、

「後進をどのように育成すればよいのか」など、

一般のビジネスマンにもヒントになる点が非常に多い本です。

●本田直之さん流に言えば、村上さんは、

誰もが日常的に目にしている、

漫画やアニメなどのありふれた材料を使って、

最高のレバレッジを利かせて成功した金持ち芸術家であると

言ってもよいでしょうね。

 

【マストポイント】

@時には人非人と言われてもしかたがないほどに

周囲を追い込んでゆく。プレッシャーをかけてゆく。

重圧を作ることができる人とそうでない人では、

行動の結果にかなり差がつくでしょう。

プレッシャーをかける理由は簡単です。

重圧をかけるというマネジメントをしなければ、

いいものができあがらないからです。

A仕事を決めてから好きになるよりも、

好きなことに仕事をひきつけていく方が、

お客さんに共感してもらえる頻度が高くなるというのは

当然のことですから。

だからその時々の自分の欲求に忠実になれば、

ちゃんと仕事がくっついてくるんじゃないかと

思うのです。

B生き残るのだ、という情熱が不可欠なのです。

「ある程度、食べられるだけのお金を稼いで終わり」というのなら、

そこまでやる必要はありません。

サラリーマンより低い収入でも自由にやれていいというのなら、

別に今の時代は何をやってでも生きていけますからね。

そういう意味では過剰な人じゃないと過剰なところには

辿りつけません。

何倍も鍛錬してくる人じゃなければ生き残れません。

情熱の心が折れたらだめなのです。

(以上本文より。一部改変)

【著者略歴】

村上隆

1962年生まれ。現代美術アーティスト。アニメなどのサブカルチャーを下敷きにした奇抜な作品が海外で評価され、日本に逆上陸。各種のメディアやイベントに積極的に関わり、元気のない日本の現代美術界における突出した存在となっている。美術界にあって、時に拝金主義的とも見られがちな言動や、既存の日本アニメやマンガの手法を(ある意味無節操に)取り入れた作品作りから、批判が多いことでも有名。

カイカイキキ 公式ホームページ http://www.kaikaikiki.co.jp/

ラベル:村上隆
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