必読本 第741冊目
経営問答塾―一流への道
鍵山 秀三郎(著)
¥ 1,575 (税込)
致知出版社
単行本: 227ページ
2008年7月17日 初版
●小さな会社でも一流になれる。
「創業の精神」「社風をつくる」「人材を育てる心得」など、
全5講で示す鍵山流経営の見方・考え方。
各講に付した「問答篇」で、現場の経営者からの様々な質問に回答する。
●私の心の師匠、鍵山秀三郎さんの出たばかりの最新刊。
最近、とんとご無沙汰だったが、
最近酷暑の影響で、精神的にややたるんでいたこともあり、
渇を入れる意味もあって、一気に読んでみました。
●内容的には、一般経営者向けの講演会全5回分を収録したもの。
創業、困難の乗り越え方、社風の作り方、
人材育成のコツ、永続的な企業繁栄の方法と、
いっぱしの経営者ならば誰もが直面するテーマに関して、
鍵山さんが壮絶な体験を交えながら、会社経営の要諦を述べる。
●各講演の末尾には、一般経営者からの質問に
鍵山さんが答える部分があるのだが、
「社員にはやっぱり高給で報いるべきか」
「グリーン車に乗らなくては、グリーン車に乗るような
裕福な人々の考えがわからないのではないか」など、
本論以上に面白く読める部分。
ちょっとイジワルじゃないかというぐらいに、
様々な角度からの経営者らしい質問が寄せられているのだが、
鍵山さんは答えに窮することなく、
ズバリと己の考えを述べているところはさすがである。
●この本を読んで改めて痛感するのは、
鍵山さんの無私の心、崇高な使命感、謙虚さ、
そして自社社員に対する惜しみない愛情である。
今だに朝早くから会社周辺の掃除をボランティアで行い、
専門の清掃会社が脱帽するほどに、
徹底して分別作業までしてしまう。
贅沢、浪費を嫌い、個人資産、収入のほとんどを
「掃除の会」の活動費に充てる。
自社の社員を人間扱いしないような取引先とは、
たとえ大口の相手であっても、断固として縁を切り、
社員を守る。
奥様が呆れるぐらいまでに
ボロボロになっても服も靴も着用し続け、
1万円以下の安物の腕時計を愛用、
電車の移動では重い荷物を誰に持たせず、一人で抱え、
グリーン席に乗ってもおかしくない身分にもかかわらず、
いまだに自由席での移動を好む。
●鍵山さんのすごさは今更言うまでもないことだが、
本書を読むと、改めて、人間というものは
これほどまでに自我を捨てることができるものなのか、
己の欲望を克服して、他者、世の中のために
身を捧げることができるものなのかと、
言葉を失うほどに感服させられてしまいます。
「俺は社長だ」と天狗になっているような人は、
その鼻をポッキリと折られるような気分にさせられるはずです。
●最近読んだ本の中では、特にお薦めの1冊。
経営者の方はもちろん、ごく普通の会社員、学生さんにも
推薦したい本です。
仕事、人生に対する考え方が根底から変わるはずです。
下の【マストポイント】に、心に響いた言葉を掲載しましたが、
3つに絞りきれないほどに、名言の類が次から次へと出てくることも併せて付記しておきます。
●めったにこんなことはないのだが、
読書中、本文の文字が、3Dのように、
眼前に浮かび上がってくるような迫力まで感じたし、
読破後、すぐに初めから読み返したくなるような
気分にまでもさせてくれた。
なかなかこういう名著にはお目にかかれるものではないですよ。
【マストポイント】
@「私はゴルフを一回もやったことがありませんが、
ゴルフをやっている人の話はいろんな機会に聞くことがあります。
ルールはよくわかりませんけれど、人のゴルフ談義を聞いていると、
「何ヤード飛ばした」ということを自慢される方が多いのです。
しかし、これも遠くへ飛ばせばいいというものではないでしょう。
方向が外れていれば、遠くへ飛ばせば飛ばすほど、
マイナスになるはずです。
遠くへ飛ばすよりも真っ直ぐ正しい方向に飛ばすことを
重ねていくほうが、間違いなくゴールに近づくはずです。
私はそう思うのです」
A「君たちにお願いがあります。
これは命令でもなく指示でもなく、お願いです。
私たちは商売を通して何を最終目的にするかといえば、
それはお客様の心を洗って返すことです。
ちょっとおこがましいけれど、これがうちの会社の最終目的です。
たとえば不機嫌な気分できた人がニコニコして帰るとか、
ちょっと邪な考えを持っていた人が晴れ晴れとした心になって
帰るとしたら、それは心を洗ってあげたのと同じなんですよ」
(鍵山さんが全国のイエローハットを行脚して、
社員さんに伝えている言葉)
B「私は、社員に経営者として接するときにはっきりとした
基準を持っているのです。
その第一は、どんなに大きな失敗であっても
失敗は怒らないということです。
失敗したからという理由でその人の待遇を悪くしたりしたことも
ありません。
反対に、どんなに小さなことであっても、それをやれば人が
迷惑をする、あるいは、それを怠れば人が迷惑ということを知っていて
やるということについては、私は放っておきません。
第二の基準は、自分の時々の感情でもって
物事を決めないということです。
同じことに対して、この間は笑っていたのに今日は怒っているという
ような、その日の感情に左右されません」
(以上、本文より)
【著者略歴】
鍵山秀三郎(かぎやま・ひでさぶろう)
1933年、東京都生まれ。52年、疎開先の岐阜県立東濃高校を卒業後、一時は代用教員を務める。53年、上京して自動車用品会社「デトロイト商会」に入社。61年、独立して「ローヤル」を創業。当初は自転車一台から行商をスタートさせた。97年、東証第一部上場とともに、社名を「イエローハット」に変更。98年、同社取締役相談役となる。誰にでもできる簡単なことを徹底して実践する「凡事徹底」を信条とし、創業以来続けている"掃除"には多くの人が共鳴。創唱した「日本を美しくする会」の活動は国内外にまで広がる。現在、同会の相談役を務めている。著書に『凡事徹底』『あとからくる君たちへ伝えたいこと』(致知出版社)、『鍵山秀三郎「一日一話」』『掃除道』(PHP研究所)など多数。
日本を美しくする会 公式ホームページ http://www.souji.jp/