2008年09月18日

必読本 第775冊目 こころと脳の対話

必読本 第775冊目

kokoro1.jpg

こころと脳の対話

河合 隼雄(著), 茂木 健一郎(著)

¥ 1,260 (税込)

単行本: 203ページ

2008年7月19日 初版

 

●脳科学と心理療法は現代人の苦悩を救えるのか。

人生を2倍楽しく生きるための、ココロとアタマの活用法を紹介した対談本。

月刊『潮』誌上の3度の対談を速記録から再構成。

●テレビなどでもおなじみの脳科学者茂木健一郎さんと、

2007年惜しまれつつも逝去された、臨床心理学者の河合隼雄さんの対談集。

本のタイトルと(わかりづらいが)カバーイラストでもわかる通り、

「脳と心の関係性」をテーマに語り合った、

実に興味深い内容の対話集である。

●構成的には、2005年〜2006年までに

全部で3回分行われた対談を一冊にまとめたものとなっている。

茂木さんがホスト的な役割を担当しているせいもあるが、

河合さんのお話がすこぶる面白い。

精神、心理を病んだ方々を、臨床的にどのように治療しているのかを

語ったくだりや、日本人の精神構造を分析したくだり、

箱庭療法と夢の関係、京大時代から、海外の一流の心理学者との交友まで、

時間を忘れるほどに刺激的なお話が続く。

さすが、日本を代表する知識人にして、文化庁長官を何期も

勤め上げただけのことはある。

●下のマストポイントにも面白いエピソードを何点か記載しましたが、

他にも「講演が上手くなったカウンセラーは本職の腕が落ちる」

という持論を持っていた河合さんは、

皮肉にも講演が大評判で、どうしても断りきれなかった講演会の時は、

全く準備をしないで、その場にいる人の顔を見てアドリブで話し、

時間きっかりになったらすぐに終わるという話、

離人症性障害で、どんな医者に行っても治らなかった美人の患者は、

河合さんと初対面であった時に、この人ならば治せると直感した。

なぜなら、外形的なもの(顔、服装、話の内容さえも)を一切取り払って、

その患者の「魂」だけを見ようとしていたからだという話、

現代人がイライラしすぎるのは、お金はあるけれども、

死んだ後にどうなるかを全く知らないからだ。

昔の人は大変不便で貧しい暮らしをしていたけれども、

死んだ後にどうなるかを知っていたから、逆に安心して生きていくことが

できたという話などなど、興味が尽きない話が続きます。

●「脳と心の関係」などと特に難しく構えることなく、

最近、なんか憂鬱だ、気分が不安定だという方や、

人並み以上に、繊細、神経質な性格の方、

対人関係に悩まれているような方に特にお薦めの本です。

全文口語体なので、時間を要せず一気に読める気軽さも

うれしいです。

 

【マストポイント】

@「僕は日本の神話をモデルに考えてましてね。

日本の神話の場合は、簡単にいうてしまうと、

三つの神様がいるなかで、ふたつの神様(天照大御神と須佐之男命)は

ものすごい葛藤とか対立があるんですよ。

で、三つ目の真ん中の神様(月読尊)が大事なんやけど、

真ん中は何もしないんですね。無為なんですね。

そういうのをずっと調べていって、

僕は「中空均衡構造」という呼び方にしたんです。

真ん中はプリンシプル(原理)もパワーももってないんですよ。

だから、全体がバランスがとれんるんだと。

これに対するのが、「中心統合構造」。

これは、センターが全部統合していると。

これは中心がプリンシプルとパワーをもっているわけです。

日本のモデルは「中空均衡」。あちらのモデルは「中心統合」。

いちばんよくわかるのは、日本の場合は、リーダーがだいたいなにもせずに、

みなさんのお伺いでやるでしょう(笑)。

向こうは本当にリーダーになるわけですよ。リードしていくわけですね」

A「河合「僕がよくいうのは、話の内容と、こっちの疲れの度合いの乖離が

ひどい場合は、相手の症状は深い、というんです。

たとえば、こられた人が「人を殺したい。自分も死にたい」とか

そんな話をしたら、しんどくなるのは当たり前でしょう。

そうではなくて、わりとふつうの話をして帰っていったのに、

気がついたらものすごく疲れている場合があるんです。

その場合はもう、その人の症状は深い。

それはやっぱり、こちら側が相手と関係をもつために、

ものすごく苦労してる証拠ですね。

話のコンテンツ(内容)は簡単なんですよ。

それではないところで、ものすごく苦労してるわけ」

茂木「河合先生の言葉、宝石のようです。

ああ、だから、あの人と話すと疲れるんだとか、

いろいろ当てはまる人がいる(笑)」

河合「だからね、そういう人はかわいそうに、やっぱり人に嫌われるんです」」

B河合「だからほとんど僕の場合は、

話を聞いているだけのことが多いです。

できるかぎり、まっすぐ聞こうと思ってます。

でもやっぱりね、できるかぎりといっても、なかなかまっすぐ聞けないですよ。

わかるでしょう。くるたびに奥さんの悪口ばかりいってたら、

「お前、ええかげんにせい。お前はどうや」といいたくなる(笑)。

それを何回きて何回奥さんの悪口をいわれても、できるかぎりまっすぐ聞く。

なかなかできませんけれど、その修練を僕はしてきたんじゃないかなぁと

思ってますね。

だからうまいこといっているときは、僕は聞いているだけで、

その人が自分で考えて、自分でよくなっていかれます。

本当にそういった人、いますよ。

僕はなにもいうてませんからね。自分でしゃべって、自分で考えて、

自分で解決されたからです。」


(以上本文より。一部改変) 

 

【著者略歴】

茂木 健一郎

1962年東京生まれ、脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院連携教授(脳科学、認知科学)、東京芸術大学非常勤講師(美術解剖学)。その他、東京大学、大阪大学、早稲田大学、聖心女子大学などの非常勤講師もつとめる。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。専門は脳科学、認知科学。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組み、近年はメディアでの活躍も目覚ましい。『脳と仮想』で、第四回小林秀雄賞を受賞。主な著書に『脳とクオリア』『生きて死ぬ私』『心を生みだす脳のシステム』『意識とはなにか――<私>を生成する脳』『脳内現象』『「脳」整理法』『クオリア降臨』『脳の中の人生』『ひらめき脳』『クオリア入門ー心が脳を感じるとき』がある。

河合 隼雄


1928(昭和3)年、兵庫県生れ。京大理学部卒。京大名誉教授。文化庁長官。日本のユング派心理学の第一人者であり、心理療法家。独自の視点から日本の文化や社会、日本人の精神構造を考察し続け、物語世界にも造詣が深い。2007年逝去。

posted by miura at 17:52| 山形 ☁| Comment(1) | TrackBack(1) | 健康・食事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
良いブログですね
応援ポチッ!
Posted by ココロ at 2008年09月20日 08:16
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

本の脳活用
Excerpt: 「脳」整理法楽天ブックス インターネットをはじめ、テレビマスコミなど、現代社会は膨大な情報が一方的に流される。人間の脳の容量をはるかに超えている。それを誰もが簡単に手に入れられるのは、その気があればで..
Weblog: つき指の読書日記
Tracked: 2008-10-04 06:57
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。