2008年10月09日

必読本 第788冊目 遊行の門

必読本 第788冊目

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遊行の門

五木 寛之(著)

¥ 1,155 (税込)

徳間書店

単行本: 242ページ

2008年9月30日 初版

 

●「一億総うつ時代」をあなたはどう生きるか?

人生の節々にある遊行の門。

それを見つけ出し、叩いた者が輝ける自分自身をつかむ。

●先日、NHKの『生活ほっとモーニング』を

なにげなく見ていたら、五木さんが出演されていた

(余談だが、この番組の司会を担当されている黒崎めぐみアナのことは

私はひそかに応援しているぐらいに大ファンである)。

昨年などは、仏教関係のものを中心に熱心に五木さんの本を

読んだ時期があったが、最近はとんとご無沙汰だった。

そのテレビを縁に、久しぶりに読んでみるかという感じで

手にしたのが本書である。

先月9月末に出たばかりの新刊で、

主だった書店ではうず高く平積みされているはずである。

●タイトルの「遊行」とは、

人生を「学生期」、「家住期」、「林住期」、「遊行期」の4つの時期に分けた

古代のインドの思想から取られていて、

一言で言ってしまえば、

幼い子供に還り、我を忘れて遊びながら生きるという、

人生の最晩年の時期を指す。

●内容的には、

夕刊紙や週刊誌連載分、書下ろしなどを一冊にまとめた、

軽いタッチのエッセイである。

基本的には、老齢期をいかにして生きるべきかを語った本だが、

うつ病、自殺問題、ニート、引きこもり現象、介護、地球温暖化、

凶悪犯罪、格差社会、アンチエイジング、

ブッダや親鸞などのエピソードなど、

誰もが気になる同時代的なテーマに関しても、広範に語られている。

若い人が読んでも得るところが多い。

●五木さんは1932年生まれだから、本年は御年76歳になられる計算である。

失礼ながら、多少ボケていてもおかしくはない年齢だ。

しかし、相も変わらず、物事の実相を見通す観察眼、

古いものだけではなく、新しいものも的確に捉える

時代感覚の鋭さというものは一方ならぬものがある。

そこらへんの評論家、コメンテーターが霞んでしまうぐらいだ。

例によって、通俗的な内容、軽妙洒脱な文章もあり、

ストレスを感じず、実に短時間で読破できる本です。

●下のマストポイントに、特に心に残った言葉を書きましたが、

他にも、五木さんならではという、ありがたいお言葉を数多く見出せる。

日々の生活の中で、自分の老後や親の介護など、

時に空虚感、不安感を感じてしまう方、

原因不明の倦怠感、無気力症にお悩みで、

なおかつ周りからその理解を得られない方、

「お金持ち」、「勝ち組」などという言葉に昔から違和感を持ち、

それ以外の精神的なもの、形而上学的なことに

意味や価値を見出したいとお考えの方には、

非常にお薦めの書です。

【マストポイント】

@「成功しようと、失敗しようと、満足しようと絶望しようと、

とりあえず今日まで生きてきた、そしていまを生き、

なんとか明日も生きようとしている人間に、

私は心の底から敬意を表したいと思うのだ。

人は生きているだけで価値がある。

そんな自分を尊敬し、大事にしなければ。

一本の麦の、必死で生きるすがたに素直に感動できないものだろうか

(4ヶ月の間、植木鉢に植えた一本のライムギの根っこは、

合計11,200kmもの長さに達したという)。

命とは、それほどの目に見えない努力によって支えられているのである。

不合理な世の中である。格差はいつまでも続く。生きていくことは苦しい。

それでも生きるしかない。ただ生きている、

そのことに深い意味があると信じて」

A「人の世は一寸先は闇である。

処刑する側も、される側も、

ほんとうは明日のことなどわかるものではない

(石田三成が処刑される直前、移送する侍から差し出された柿を、

「腹に悪い」といって断ったというエピソードを指す)。

であるならば、養生は一生のためではなく、

きょう一日のための養生であるべきだろう。

きょう一日を無事にすごす。

きょう一日で、あすは宇宙が消滅するとしても、

投げ出さずにちゃんと養生する。

健康法も、養生も、しょせん気やすめにすぎない。

それが実際に役に立つかどうか、どこにも証明する手段はない。

しかし、それでも養生すると決めたらやるしかないのだ。

きょう一日、いまひと時のために。それが養生である」

B「いま手が動き、頭が働くこの時間を有効に使いたい。

原稿を書くことも、取材や講演やコンサートなどで全国を

とび回るのも、残された時間の少なさを

実感するがゆえにほかならない。

私はどちらかといえば短気な人間である。

すぐに腹を立てたり、カッとなったりする。

しかし、あと残された時間がわずかだと思えば、

その間だけでも笑顔で穏やかにふるまいたいと、

柄にもなく自戒したりするのだ。

人はすべて老い、人はすべて病み、人はすべて死ぬ。

この真実の上にこそ、きょう一日の命が見えてくるのである」

(以上本文より。一部、主旨を変えない限りで改変) 

【著者略歴】

五木 寛之
1932年
福岡県生まれ。『蒼ざめた馬を見よ』で第56回直木賞、『青春の門 筑豊篇』ほかで第10回吉川英治文学賞を受賞。81年より一時休筆して京都の龍谷大学に聴講生として通学。ニューヨークで刊行された英文版『TARIKI』が2001年度ブック・オブ・ザ・イヤー(スピリチュアル部門)に。2002年、菊池寛賞を受賞。2004年、仏教伝道文化賞を受賞。





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