2008年11月17日

必読本 第812冊目 映画論講義

必読本 第812冊目

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映画論講義

蓮實 重彦 (著)

¥ 2,730 (税込)

東京大学出版会

単行本: 516ページ

2008年9月27日 初版

 

●無数の細部からなる映画の魅力。

豊かな映画史の中から言葉を紡いだ心躍らせる講義。

●世界の映画評論ネットワークの中心にいると言ってよい、

蓮實重彦さんの最新映画講演録集。

1996年から2007年までに、各地の映画祭、シンポジウム、

対談、映画誌などで放った言葉の数々を一冊にまとめたものである。

●蓮實先生といえば、私が大学生(1990年前後)の頃、

ニューアカデミズム、ポストモダン全盛だったこともあり、

柄谷行人、浅田彰、山口昌男、中沢新一などとともに、

よく理解もできないのに書籍を多数買い求め、

本棚の肥やしになってしまったという苦い記憶があります。

難解極まりないことで有名だった蓮實先生の本ですが、

『反=日本語論』(筑摩書房)だけは妙に感動し、

色々な人に推薦するほど愛読したものです。

●一時、体調不良で大学を休んでいた頃には、

WOWOWの放送が開始したこともあり、

蓮實先生の映画論の本で推薦されていた映画作家の作品を中心に、

映画三昧の日々を過ごしていたという思い出もあります

(いわゆる「不朽の名作」、「映画ベスト100」といわれる映画の大半は、

ヒマだったこの時期に観たと思います)。

最近は、インターネットばかりの生活で、ほとんど

映画を見るという習慣から離れてしまったということもあり、

多少の反省も込めて、本書を読んでみることにしました。

●大勢の一般大衆に向けて語られた講演録ということもあり、

氏の本の中では、比較的に読みやすい口語体の文章である。

しかし、異常なぐらいに長大な文章、

一読しただけでは全く意味不明の難解な表現など、

独特な蓮實節を期待した熱心なファンには、

ちょっと物足らない部分があるかもしれません。

ただ、500ページを超える大作ゆえ、読み応えはあります。

●ハワード・ホークス、ジョン・フォード、小津安二郎などに対する偏愛ぶり、

ゴダールに対する複雑な感情、

ウォシャウスキー兄弟、スコセッシはダメ、

タランティーノ、ティム・バートン、トム・クルーズ、

浅野忠信に対する評価は高い、

黒沢清、青山真治、周防正行など、教え子の作品にはあえて触れないなど、

蓮實先生独特の映画鑑賞の視点、思想が垣間見れるので、

映画マニアには非常に楽しく読める本かと思います。

淀川長治亡き後、随一の映画知識を持つ批評家だけに、

その観察眼の鋭さ、歯に衣着せぬその舌鋒の鋭さは、

他の追随を許さぬものがあります。

●映画ファンであるなしに全く関係なく、

一流知識人の、語彙豊富な、独特の文章表現を学びたい方、

自分が愛するものに対する熱狂ぶり、偏愛ぶりというものは

いかなるものなのかということを知りたいという方にもお薦めの本です。

本書を読後、私もまた映画を観たい!という感じが無性にしてきましたので、

手頃なハリウッド映画などから、映画鑑賞する習慣を復活させたいと思います。

 

【マストポイント】

@「書いたり、教えたりする人間が、

みずからも無知を抱える人間であるということはごく当然です。

ところが、教える人間はあらゆる知識を持っているものだと、

教わる方も勘違いし、教えている人まで、

時にはそのように思い込んでしまうという困った現象も起こるのです。

しかし、最低限の知識を心得ておくべきであることはいうまでもありません」

A「批評を書く側も、批評を受け取る側も、

たった一人の言葉を信用してはなりません。

何かを納得するには、複数の視点に触れねばなりません。

何ごとにしろ、複数の情報源に当たるという過程が重要なのであり、

それにはどうしても生活のゆとりが必要となります。

複数の視点を欠いた理解は、ゆとりがなく、必ず単調化して息苦しくなります」

B「ジョン・フォードだって、ハワード・ホークスだって、ヒッチコックだって

頭は良かったわけですよね。

ところが一方で、頭の良さだけではなくて、

がむしゃらな努力が勝つという現実が出てくるんじゃないか、

とずっと思っているんです。

ずっと思っているということは、そう願っているということではなくて、

世の中ってそういうものじゃないかと思っているのです。

どこまでも頭のいい人だけが勝ってたら救いがないわけですよね」

(以上、本文より抜粋。一部改変あり) 

【著者略歴】

蓮實 重彦(はすみ・しげひこ):1936年生まれ。フランス文学者、文芸評論家、映画評論家。元東京大学総長。主な著書に、『監督 小津安二郎[増補決定版]』(筑摩書房 03)、『映画狂人』シリーズ(河出書房新社 00-04)、『「赤」の誘惑』(新潮社 07)、『映画崩壊前夜』(青土社 08)、ほか多数。

ラベル:蓮實重彦
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