2008年11月23日

必読本 第816冊目 寿司屋のカラクリ

必読本 第816冊目

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寿司屋のカラクリ

大久保 一彦 (著)

¥ 735 (税込)

筑摩書房

新書: 198ページ

2008年11月10日 初版

 

●水産資源の国際的な争奪戦で危機に立つ「寿司」。

そんな中、心ある寿司屋はさまざまな戦略を練り、工夫を凝らしている。

それぞれの店の「カラクリ」を解き明かし、

回転寿司から高級店までの楽しみ方とオススメ店を紹介する。

●人気飲食コンサルタント大久保一彦さんの11月に発売されたばかりの最新刊。

著者の中でも異質と言える「寿司」一点に絞って書かれた本。

現在、100円均一店など、空前の回転寿司ブームに沸いているが、

「寿司」一本に絞って、その仕入れ、メニュー作り、経営の仕組みを

分析解説した本がなかなかなかった。

●最近、お寿司に関して個人的に思うのは、

やはり、安売り回転寿司屋が

全国的にちょっと過剰になりすぎたかなということです。

大手チェーン店でも、かっぱ寿司の躍進と、くら寿司の落ち込みなど、

「勝ち組と負け組の2極化現象」が起こっているというニュースも最近目にしました。

今年利用したお店で記憶に残っているものでも、

トイレの便器が割れたまま、店内も乱雑で非常に小汚く、

板さんにも覇気も笑顔もなく、ネタも強烈に不味かったお店(秋田県大仙市)、

あろうことか、回転台で回ってきた寿司皿に長い髪の毛が一本ついたたまま

出てきて、そのことを指摘すると、素直に謝罪することなく

どこ吹く風のような冷たい対応のお店(ロン毛のフリーターは飲食店で

髪を短くするよう指導されるはずだが、その店は例外であった。

また、調理場で私語を言いまくっているのが客席まで筒抜けでもあった。

群馬県高崎市)など、たとえ100円寿司だろうと、玉石混淆、

二度と行きたくないお店は、確かに増えた感じがしますね。

皆様も、安売り回転寿司屋がこれほどまでに世の中に増えたにもかかわらず、

利用するお店は固定されているという方も多いのではないでしょうか。

●全国チェーンの回転寿司や、知る人ぞ知る超高級店はもちろんのこと、

海外に広まっていったsushi店、一家言持ちながら地元密着型で繁盛している地方店など、

実に幅広いお店を取材されている。

お客さんにはなかなかわからない、ネタやシャリの美味さの秘密

(寿司の王様マグロに関する解説には特に紙数が割かれている。

「寿司はシャリに六分の味があり」という言葉もあり、

人気店は、ネタ以上に白米に力を入れていて、

新米ではなく一年寝かせた古米を使っているというのは驚き)、

日本近海での魚の生育分布図や、

海から店までの、涙ぐましい運搬方法の苦労話、

お寿司の通な食べ方、美味しいお店の情報など、

情報量は非常に膨大である。

●同業他店との熾烈な競争が日々行われているこの業界で、

「企業秘密」を堂々と明かすということは、相当なリスクを抱えることで、

一般的にこの手の取材は断るはずだ。

しかし、本書で紹介されている数々の寿司店は、

惜し気もなく各種の情報を著者に提供している。

店の高邁な精神と、著者に対する信頼の高さを感じさせます

(巻末には本文で紹介されたお店一覧があるので、

近場に足を運ぶ機会があれば、是非立ち寄りたい)

●素人からプロまで、幅広い層に向けて、寿司の網羅的な知識を盛り込んで書かれた本だが、

寿司の食べ方の流儀(手で食べるべきか、箸で食べるべきか。

白身、赤身、貝、軍艦、どういう順番で食べるべきかなど)、

美味しいお店と不人気店の見分け方、

寿司用語のウンチク話など、初心者的な知識ももうちょっと盛り込んでもよかったか。

この点が欠落していたのは、硬派の新書という形で発売されたせいだろうが、

写真、データ図解類、一口コラムなどを増やして、

1,470円(税込)ぐらいの一般書籍として発売しても面白かったと思う。

本書の売れ行き次第で、

経営側に向けた『繁盛する回転寿司屋の作り方』のような、

著者お得意のスタイルの後続本が出される可能性もある。

●純粋に、寿司全般の知識を増やしたい方はもちろんのこと、

普段、安い回転寿司ばかりしか食べていなかったが、

高級店に一度チャレンジしたいとお考えの方が予備知識的に読む本

(大体の値段や作法など、初心者には不安な部分が

明確に解説されていて安心。

ミシュラン3つ星のあの名店のこともちょっと出てくる)とか、

人気店の商売繁盛の秘訣

(原価などを考えて、寿司一貫の重さをちょっと軽めにケチったら、

客足が減った。その後、一貫を大き目に増量したら、

客足も儲けも増えた、など、

人気寿司店が実行している心憎いサービスの数々が紹介されている)

が出てくるという意味で、他分野の飲食店経営者、店長が読むなど、

汎用的に使える本です。

【マストポイント】

@「立ちの寿司屋(昔ながらの、カウンターで食べる高級店)で

潰れていったお店の多くは、

お客と店の一体感を作れなかったのではないでしょうか。

つまり、カウンターの中で寿司を握る職人が、目の前のお客にうまく

チューンを合わせられなかったことが店を廃業に追い込んじゃったんじゃないか、

と思うのです。

職人がお客にチューンを合わせられなければ、お客が合わせるしかない。

そんな面倒なことをしてまで知らない店に行きたくない、ということです」

(寿司屋だけに限らず、どの飲食店でも、

目の前に座ったカウンターのお客さんに、

気が利いた一言も言えないようでは、到底その店の先は知れている。

お客側に、カウンター内の調理人やマスターへの妙な気を使わせてはならない。

気疲れしてしまって、二度と来店してもらえなくなる。

他人行儀で変にお高く止まっている店は、冷笑、敬遠されるだけ)

A「寿司を味わうだけではなく、雰囲気を感じ、

最後は元気になって幸福感に満ちた顔のお客を見たい。

そのために、スタッフが楽しく仕事をするように心がけています。

そうすることで、スタッフに自然に笑顔が生まれ、お客に伝染するのです」

「『人は金なり』という言葉があるように、板前さんひとりひとりを大事にして、

ひとりひとりがお金(売上)を生んでくれる。だから、板前さんでも、

ただの板前さんでなくひとりの経営者。

ひとりひとりが経営者の感覚を身につけてくれたら、

この店もまだまだ繁盛するんじゃないか」

(神奈川県秦野市『銀八鮨』オーナー伊藤幸一さんの言葉。

飲酒運転の心配を無くすため、マイクロバス2台を用意し、お客さんを

送迎しているという。また、新色絵皿で女性客の楽しみも増やす工夫も)

B「私は、「飲食店は日常の便利さを売るだけでは留まってはいけない」と

考えています。家ではなく、わざわざ食事に出かけるのだから、

店を通じて感じ取る喜びや感動がないといけないのです」

「外食産業では、いま、繁盛する店と繁盛しない店が明確になっていますが、

この違いを生ぜしめる原因は、同じことをしていながら、

単なるマニュアル作業としてとらえているか、

「感動や喜びを与える」という意識を向けて仕事をしているかの差です」

(著者が取材した神奈川県川崎市『銚子丸』では、

1、接客はニコニコ 2、言葉はハキハキ 

3、行動はキビキビ 4、寿司はイキイキ を大目標として掲げているという)

(以上本文より。一部改変) 

 

【著者略歴】

大久保 一彦
1965年神奈川県生まれ。飲食店チェーン数社に勤務したのち、株式会社グリーンハウスフーズ(現株式会社グリーンハウス)に入社。「とんかつ新宿さぼてん」の多店舗化を成功させる。現在は独立し、飲食店の演出家、経営コンサルタントとして数多くの飲食店を繁盛店に導いている。

大久保一彦さん ホームページ http://yume-akinai.com/

ラベル:大久保一彦 寿司
posted by miura at 17:42| 山形 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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