2008年11月30日

必読本 第821冊目 伝説のプロ野球選手に会いに行く

必読本 第821冊目

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伝説のプロ野球選手に会いに行く

高橋 安幸(著)

¥ 1,600 (税込)

白夜書房

単行本: 287ページ

2008年10月1日 初版


●現役時代を知らないライターが、「伝説」に会いに行く。

苅田久徳、千葉茂、小鶴誠など、10人の伝説の野球人の生に触れ、

口調もそのままに、リアリティを全面に出してまとめた、

かつてない臨場感で迫る超インタビュー。

●プロ野球史に名前を刻む伝説のプレーヤー10人に、

現役当時の姿を知らない若手ライターがインタビューを訊きに行く。

私は一度も読んだことがないのだが、

雑誌「野球小僧」に連載していたものを一冊に書籍化したものだそうである。

●プロ野球を愛する人ならば、

川上哲治さんはピッチャーの投げた球が止まって見えたとか、

藤村富美男さんのバットは、

今では規格外の物干し竿のような長大なものだったとか、

村山実さんはフォークボールを握るために、

人差し指と中指の間をナイフで切って広げたとか、

様々な伝説を耳にしたことがあるかと思う。

それらの逸話、伝説を中心に、

ファン心理的な観点で、フリーライターの著者が

往年のプロ野球選手に現役時代の体験談や成功の秘訣を

聞きに行くというコンセプトの本です。

●ともかく、又聞き、噂話ではなく、

名選手本人に当時の話を生で聞いているというのが

プロ野球ファンにはたまらないだろう。

杉下茂さんは、伝家の宝刀フォークボールを

めったなことでは投げず、ここぞという勝負所、

一試合4〜5球しか投げなかった

(ピッチャーはストレートが正道、フォークは所詮、邪道の球という意識だった)、

シーズン42勝という不滅の記録を上げた年、稲尾和久さんは、

目の中に3つの升目が浮かんでくるという不思議な体験をした

中西太さんの、バッティングは「股間」

(正確に言うと、太もも内側の内転筋の力)で打つという理論など、

非常に面白いエピソードが次から次へと出てくる。

プロ野球観戦ができないヒマなオフシーズンに読むにはピッタリの本です

(残念ながら、千葉茂、小鶴誠、稲尾和久、苅田久徳(カバー写真の人)は、

本書発刊前に亡くなられた)。

●この本で扱われている選手たちは、引退後、

指導者としても名をあげた人が少なくないのですが、

若者から慕われ、その長所を引き出していくコーチングの方法、

組織を束ね、全体としての成績、結果を上げて行くという経営者的な思考法を

学ぶという意味で、ビジネスマンにも非常に参考になる本です。

選手としてよりも監督としての名声が高かった

西本幸雄、関根潤三さんのお話には、特にヒントになるものが多いでしょう。

●この本の巻末には、プロ野球に造詣が深いミュージシャン大瀧詠一さんと

著者の対談風の解説がおまけとしてついているのですが、

これは、プロ野球ファンであるなしに関係なく、

非常に面白い話が述べられております。

何でもその場その場で一回勝負でケリをつけず、

後で確認すればいいや、先に延ばしておけばいいやという

「録画世代」が時代をダメにした、

昔は、(審判やキャッチャーではなく)打席という「場」に

向かって一礼してから打席に入った、

そして、一旦打席に入ったらめったなことでは打席を外さず、

構えの姿勢に入ってからは微動だにしなかった、

内角球も避けなかった(川上哲治、榎本喜八)

それがピッチャーに非常に威圧感を与えた、などという

なかなか鋭いことが語られております。

本文以上にタメになる部分です。


【マストポイント】

@著者「体づくりについてうかがいたいのですが、金田さんはかなり、

食べることを体づくりの原点になさって、一生懸命だったそうですね?」

金田正一「アンタたち一般人だって、食べることを一生懸命にしているつもりだと

言うかもしれないが、適当に食べて飲んで、リラックスしているかもしれん。

だが、野球選手ちゅうのは、常に緊張感を伴って、

ときには勝負にこだわって、一日中食べられないこともある。

それを克服しようと、食べる工夫をしたということや。

今の人たちはその工夫ができない。

今の人は味に鈍感だと思うな、むしろ。

鈍感じゃあ、試合に勝てないよ。

まずは食べることを原点に取りかかってやらないと」

A杉下茂「今の若い人に言いたいのは、

常にほかの人のいいところを盗む、という気持ちを持って、

自分なりに考えてほしいわけ。

昔はコーチもいねぇんだよ、フォークボールのお手本もいなかった。

誰かコーチがいると、選手は作ってもらえるという感覚になりやすいが、

あくまでも、コーチは教える人ではなくて相談相手。

作るのは自分だ、という気持ちで接してほしいね。

そしたら個性のあるさ、いいピッチャーになれる。

お互いの話がぶつかって初めて、いい関係になれると思うね。

俺はコーチをやってて、いつも、そういう気分だったよ」

B中西太「師匠である三原脩さんの野球ちゅうのは

(ちなみに、中西さんの奥様は三原さんの長女で、三原さんは義理の父にもあたる)、

簡単に言やあ、人の長所を見て、合ったところで使うちゅう野球ね。

それで自信を持たしてあげて、そのなかで短所を見つけてやれば、

短所もスムーズに消えていく。

長所を伸ばせば短所が消えやすい。

長所を見抜くちゅうのは簡単には行かんよ。本当に愛情を持って見てやらんとね、

見落とすわな。実際はこれがいちばん難しいんだけどね」

(以上本文より。一部改変)


【著者略歴】

高橋 安幸
1965年生まれ、新潟県出身。日本大学藝術学部卒業。出版社勤務を経てフリーライターとなり、『野球小僧』には創刊時から関わった。現在は、「野球」をメインに週刊誌、月刊誌などで執筆中。

ラベル:高橋安幸
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