必読本 第824冊目
Chinese Posters
秋山 孝(編集)
¥ 1,890 (税込)
朝日新聞出版
単行本: 198ページ
2008年10月30日 初版
●誰もが思い浮かぶ毛沢東の肖像画など、
独自の様式美がある中国のイラストレーション・ポスターを
一挙に150点以上掲載。
建国時、文化大革命時など時代に即したポスターデザインからは、
激動の中国現代史が浮かび上がってくる。
●本来ならば、自己啓発本・成功法則本の範疇に入らない本だが、
中国関係の新刊で、私の興味に合致している本は、
図書館で見つけると、できるだけ読むようにしている。
本書は、中国の近現代史を、その時期に作られたポスターから
眺めようとというコンセプトの本である。
●中華人民共和国建国(1949年)から、文化大革命、改革開放、
そして今年起きた四川大地震、社会主義建設に貢献した著名人の肖像画まで、
その時期に作成されたポスターを掲載し、
中国の政治状況、国民の生活風景を分析、解説するという内容になっている。
著者は多摩美大の教授で、グラフィックデザイナー、イラストレーターの大家でもある。
実際に中国大陸に渡り、膨大な数のポスター、バッジ、人形などを
持ち帰り、この本を完成させた。
全ページカラー印刷なので、ポスターを見ているだけでもとにかく心躍る本である。
美術、広告、HP、外装などのデザイン関係の人が見れば、
何か発想のヒントが得られそうである。
●しかし、本文あとがきにもあるように、
「一枚の絵(写真)は千の言葉よりも多くを語る」。
ほぼ100%近い識字率を誇る我々日本人からは想像できないことだろうが、
建国当時(そして、おそらく、現在の貧困地域でも)は、
文字を読めない、本が読めない国民がたくさんいたそうで、
そういう無学な人民を効果的に洗脳、操作する上で、
これらの政治的メッセージを強く込めた
イラストレーションポスターが意図的に数多く作られた。
●毛沢東は、近年、次々に発売された暴露本によれば、
大国を支配した権力者とは思えないような、
女好き、不健康、精神異常性など、俗物丸出しの人間だったようだが、
国民は毎日目にする街角ポスターのスローガンや、
家々で張られている毛主席の、福々とした笑顔にコロっとだまされ、
神のごとく盲目的に信奉し、結局、内乱や極貧の生活まで強いられたのである。
現在の北朝鮮の現状を思っても、
為政者、マスコミ、インチキ企業が意識的に繰り出すこれらのキャンペーンには
重々注意しなければならないなと改めて痛感させられます
(選挙が近づき、街中のポスター、テレビCMなどで、
善良な政党であるかのごとく、党首が笑顔で盛んに登場しているが、
毎日のようにそれらを見続けていると、「刷り込み現象」が起きて、
自然自然と彼らの言うことを正しいものだと信じ始めてしまう。
実際は大悪党かもしれないのにもかかわらず、、
毎日のようにテレビ画面でホリ●モン、小泉●一郎を目にすれば、
もしかしたら、この人物の言うことは正しいのかもしれない、
「時代の革命児」なのかもしれないと知らず知らず思い込んでしまう。
毎日定刻で出てくるお天気お姉さんの天気予報を楽しみに見ていれば、
必要以上にその女性に思い入れを持ってしまう。
車のCMでも、他に多くの種類のボディカラーが用意されているにも
かかわらず、テレビCMでいつも目にしていたカラーの車が最もよく売れる。
選挙カーが、うるさいぐらいに候補者の名前を連呼するのは、
結局、有権者が投票所で投票される際に決め手となるのが、最も名前を何度も聞かされ、
脳裏に焼きついている候補者であるからである)。
※本日の【マストポイント】はポスター関係の本なので割愛いたします。
【著者略歴】
秋山 孝
1952年新潟県長岡市生まれ。多摩美術大学卒業。東京芸術大学大学院修了。多摩美術大学教授。受賞=自然保護ポスター「WILD LIFE‐HELP」でワルシャワ国際ポスタービエンナーレ・金賞、インド核実験反対のポスターで国連賞、イタリア・コーニユ国際自然映画祭ポスター指名コンペ1席、自然保護ポスター「WILD LIFE‐HELP」でブルーノ国際グラフィックデザインビエンナーレ・アルティア賞、湾岸戦争反対ポスターeace」でメキシコ国際ポスタービエンナーレ・栄誉賞、エイズキャンペーン3点シリーズ「Man」「Lady」「Venus」でN.Y.ADC国際展・銅賞、地震をテーマとした「Tokyo Image Panic 1995 Earthquake」でN.Y.フェスティバル・銀賞、写楽生誕200周年記念ポスターで銅賞、環境保護をテーマとしたポスターでヘルシンキ国際ポスタービエンナーレ’97・栄誉賞、他多数。フィンランド、メキシコ、イタリア、ウクライナ、中国で国際ポスター展国際審査員として招聘される。1999年「秋山孝長岡コレクション」が設立される。多摩美術大学美術館と光州デザインビエンナーレ2007(韓国)において「東方のイラストレーションポスター展 中国・韓国・日本」展を企画。