2009年02月26日

必読本 第865冊目 アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝

必読本 第865冊目

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アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝

スティーブ・ウォズニアック (著), 井口 耕二 (翻訳)

¥2,100(税込み)

ダイヤモンド社

ソフトカバー:453ページ

2008年11月28日 初版



●スティーブ・ジョブズとともにアップルを創業した著者。

そのプログラマーとしての才能はジョブズも崇拝する一方、

経営者となることにまったく興味をしめさない生粋のエンジニア。

名誉も地位もお金も求めず、人を喜ばせることしか考えていない規格外の男が、

いまはじめて創業の秘話を語る。

●アップル・コンピュータといえば、

スティーブ・ジョブズばかりが有名だが、創業者の一人であり、

初期のマシンをほぼ独力で完成させたという伝説のプログラマー、

スティーブ・ウォズニアック抜きにして、今の隆盛はなかった。

本書は、機械オタクだった子供時代、電話の無料裏テク利用の世界にハマる学生時代、

一生骨を埋めるつもりだったヒューレット・パッカードでのエンジニア時代、

運命のパートナー、ジョブズと出会い、アップルを立ち上げて大成功するも、

後に会社を離れることになった経緯、そして私生活までを、

ざっくばらんな言葉で語った自叙伝。

●時間を忘れて一気に読んだという意味で、最近では特に興奮した本。

半日あまりで読破してしまった。

450ページ以上の大作だが、インタビュアーに向かって口述したものが

文章化されているため、海外著名人のインタビュー番組を見ているかのような

気楽さでスイスイスイスイ読み進んでいくことができる

(スラング連発であろう原著の雰囲気をうまく訳出した翻訳家井口氏の技量にも拍手)。

●著者は、IQが200もあるほどのいわゆる理工系天才少年で、

いたずら、ジョークと、機械いじりをこよなく愛する内向的な少年だった。

テレビ受信妨害器や電話を無料でかける機器を自作し一人悦に入る話、

ジョブズに依頼され、アーケード用のTVゲームテーブルテニス、ブロック崩しを製作した話、

金欠時代、パーツ探しに奔走し、数限りない失敗の果てに自作のPCを完成させる話など、

とにかく機械いじり、電気オタク的なマニアック話が目白押しで出てくる。

巻末には、PC関連用語集もついているので、初心者でも抵抗なく読めます。

●本書を読んでまさに痛感させられたのは、

大企業が誕生する時には、井深と盛田、本田と藤沢の例を出すまでもなく、

イケイケドンドンの猪突猛進タイプのトップと、

どちらかといえば目立つのを嫌う、縁の下の力持ちタイプの補佐役の

2頭体制でいくことが重要だということだ。

初期のアップルは、著者が技術製作的なことを一人で担い、

営業や資金調達や企画立案などはジョブズがすべて担当するという

役割分担がきっちりとなされていた。

それに関連して興味深かったのは、その性格の対照性である。

ジョブズが、人を人とも思わない激高型の経営者で、

気に入らない社員をすぐにクビにしてしまったりなどの逸話のある、

冷酷無比で神経質な性格であることはつとに有名だが、

技術畑の人間に似合わず、

著者は実に温厚、楽天的な性格で、金銭欲、上昇志向も全くなく、

大企業にありがちな権力闘争、社内政治的なこととは一切無縁の姿勢を

貫き、どこまでも一エンジニアたろうとしているのが非常に印象的であった。

●とにかく、著者は人から裏切られても、

自分が精魂込めて開発した製品を他社からパクられても、

極めて冷静、楽天的な態度を維持しているのである。

ジョブズが「鬼」なら、著者は「仏」といった感じか

(ブロック崩しゲームを完成させたギャラをジョブズが過少申告し、

著者に少なめに渡したという話が出てくるが、

ジョブズは滅法金に汚い人間らしい)。

自分の持ち株を、貢献のあった知り合いに安価で譲って

お金持ちにしてあげたというエピソード、

自分の信念に沿う慈善事業には気前よく寄付するなどの話に、

著者の人重視の姿勢、金銭欲のなさが滲み出ている

(しかし、改めて驚かされるのは、ジョブズも著者も創業者の一人で、

強大な発言権を持つはずのポジションであるにもかかわらず、

後発で入ってきた経営陣に会社を追放されたり、

その意向を却下されたりするという新興ベンチャー企業ならではの理不尽さである)。

●PC開発話以外で興味深かったのは、

私費で、有名アーティストが大挙して出演する

大規模なロックコンサートを2回も開催したという話

(30歳の時点で1億ドル(!!)もの個人資産を所有していたからこそ可能だった。

また、冷戦真っ只中、蛇蠍のように嫌悪されていた

ソ連の人々との衛星放送を、史上初めて実現させた話も面白い)、

自家用機を運転中墜落してしまい、一命は取り留めたが、

健忘症に陥ってしまい、事故当時の記憶が全くなかったという話、

結婚歴が3度もあるが、無類の子供好きで、

教育に対する並々ならぬ思いを持っていることなどであった。

●将来、IT関係を希望する理工系の高校生、大学生には

一度は読んでほしい本。

モノづくりに対する熱い情熱、夢を具現化するエピソードの数々を読めば、

私もひとつやってやろうか!、という気持ちがフツフツと湧いてくるはずです。

「自分の好きなことに全力集中すれば、お金は後からついて来る」ということを

実証したという意味で、起業家予備軍の若者にもお薦めです。


【マストポイント】

@「小さいころに、結果をあまり気にせず、今していることに集中し、

それをできるだけ完璧に仕上げることが大事だということを学んだんだ。

エンジニアの全員がこういう体験をするわけじゃない。

アップルをはじめ、いろいろなところでいろんな人と仕事をしたけど、

途中でやるべきことをすっとばして最終段階だけをなんとかしようとする人を

たくさん見た。そんなの、うまくいくはずがないんだ。絶対に無理なんだよ。

認知的発達っていうやつで、ただただそういうものなんだ。

今、理解できているレベルの二段階上なんて、誰にも教えられしない。

呪文のようにいつもくり返し言い聞かせているんだ。一歩ずつってね」

A「物事をコントロールする人より、笑って過ごす人のほうが幸せだって、僕は思う。

それが僕の考え方なんだ。

僕は、人生で一番大切なのは幸せであり、どれだけ笑って過ごせるかだと思うんだ。

頭がちょっといかれたようなヤツのほうが幸せなんだ。

僕はそういう人間だし、そうなりたいとずっと思ってきた。

だから、スティーブ・ジョブズと金の支払いでトラブルが起こっても、気にせずにきた。

もちろん、違う考え方もありうるし、あのとき、関係を絶ってしまうという考え方だってある。

でも、だからといって相手を非難しなくてもいいと思う。みんな違うんだ。

そう思って暮らすのが一番いいし、幸せになれる方法だと僕は思う」

「僕だって仕事はまじめにやるよ。エンジニアとしてすごい製品を作ったし、

それはみんなも知ってる。会社の立ち上げも製品の紹介も真剣にやってる。

でも、僕にとっては、そのことと楽しんだりジョークをかましたりするのはセットなんだ。

それが僕の人生だからね。

考えてもごらんよ。

アップル・コンピュータの特色とか個性って、要するに楽しさってことじゃん。

その大本は、人生、楽しまなきゃっていう僕のスタイルなんだ。

ジョークがあるから、いろいろなことをやる意義が生まれるんだよ」

B「僕はとてもラッキーだった。

大変革が起きようとしている時代に若者だったからね。

自動車産業が生まれようとしていたとき、ヘンリーフォードがいたように、

PCが生まれようとしていたとき、僕はそこにいて、その誕生を助けたんだ。

僕がこれほどのことをできたのは、お金がなかったからだ。

モノを作るのが上手で、ああいう製品を初めて作ったからだ。

みんなも、僕と同じぐらいラッキーであってほしいと思う。

世界は発明家を必要としている・・・・・・・すごい発明家を。

君だって、その一人になれるんだ。

自分のしていることが大好きで、

そのために必要なことならなんでもしようって気概があれば、君にもできる。

自分はどういうものを設計したいのか、作り上げたいのか、

夜、自分一人でじっと考え、考え、考え続ける。

それだけのことをする価値はある。絶対にある。本当だ」

(以上本文より。一部改変)


【著者略歴】

スティーブ・ウォズニアック
アップルを創設したもう一人のスティーブ。通称ウォズ。パソコンの世界では伝説的なエンジニアで、アップル1、アップル2をほぼ独力で開発した。発明家の殿堂、National Inventors Hall of Fame入りを果たしているほか、アメリカ国家技術賞をはじめとするさまざまな賞を授与されている。温厚な人柄で知られ、「ウォズの魔法使い」と慕う人も多い。1950年生まれ、米国カリフォルニア州在住。

井口 耕二
1959年生まれ、東京大学工学部卒、米国オハイオ州立大学大学院修士課程修了。大手石油会社でリサーチ・エンジニアなどを経験したのち、98年、技術・実務翻訳者として独立。



posted by miura at 21:04| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 自伝・一日一話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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