2009年03月05日

必読本 第868冊目 一日一生

必読本 第868冊目

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一日一生

天台宗大阿闍梨 酒井 雄哉 (著)

¥735(税込み)

朝日新聞出版

新書:191ページ

2008年10月30日 初版



●現代の“生き仏”と称される酒井雄哉・大阿闍梨の慈雨の言葉。

なぜ生きるのか。どう生きるべきか。

苦しみや死をどう受け止めたら良いのか。

人生に迷い悩むすべての人に。

●千日回峰行を2回も達成したという、超人的な僧侶、酒井雄哉さんのエッセイ。

昨年末に発売された。

新書ブームということもあり、各出版社からは興味を引く本が

続々と出版され続けているが、

本書は頭の隅でずっと気にかけながらも読む機会が延び延びになっていた本。

●口述したものを録音し、後で文字化したものゆえ、

極めて読みやすい文章になっている。

飾らない言葉の中に、酒井さんの親しみやすいお人柄がにじみ出ております。

「一日一生」、「道」、「行」、「命」、「調和」とテーマ別に

章が分けられ、各話が2〜4ページと短文であるので、

多忙な人にうれしい構成です。

全体通しても1時間ほどで読破可能です。

●学生時代、軍事学校で戦地に行く専門訓練を受けていたこと、

戦後働き始めるも職が定まらず、浮き草のような生活を送っていたこと

(株暴落で多額の負債を抱え、借金取りに追われる、

荻窪駅前で営んでいたラーメン屋が火事(放火の可能性も)になり、

挙句の果てにその一等地を国から強制没収までされる)、

新婚2ヶ月目の奥様をガス自殺で失い、途方にくれていた時、

導かれるかのように比叡山延暦寺の門を叩いたことなど、

ともかく、著者の前半生は挫折続きの連続、悲惨さを極めていた。

これほどまでの偉業を達成された高名なお坊さんにもかかわらず、

少しも偉そうな素振りを見せず、にこやかな笑顔を絶やさないのは、

そういう数奇な人生を歩んでこられたという背景があるのである。

●また、印象的だったのは、命まで関わるほどの過酷な修行を日々行いながらも、

悲壮感など全くなく、あたかも毎日の洗面や歯磨きと同じぐらいの

当たり前さで、一瞬一瞬、一日一日をこなしていくその堅実な姿だった。

以前、ご紹介した千日回峰行の本(必読本 第845冊目参照)と比べ、

ハードな体験談がほとんど語られていないのである。

あたかも、鬼ヶ島に鬼退治に行く桃太郎よろしく、

犬2匹を引き連れて千日回峰行の野道を散歩のように楽しむ話や、

琵琶湖の絶景に感激する話など、

神仏のみならず、森羅万象すべてに守られながら、

過酷な修行をエンジョイしつつ達成したとしか思えないものがある。

●千日回峰行達成日の満面の笑顔、履き潰した草鞋の数々、

飼い犬「金チャン」と戯れる姿など、

随所に収められている写真などにも、著者の普段の生活が感じられます。

女の子を陰湿にいじめていた話、会社の金を横領していた話、

師匠、両親、海外で見聞きしたエピソードなども心を打つでしょう。

章末尾には、本文で出てくる「比叡山」、「千日回峰行」の用語解説をする

コラムがあるのも、初心者には親切ですね。

●学校中退、中途退職など、人生にドロップアウトしてしまった方、

悲惨な体験がトラウマになり、いまだに精神的に立ち直れない方などに

非常におすすめの本です。

サラリと読めますが、生きる活力が沸々と湧いて来るはずです。


【マストポイント】

@「「二度の千日回峰行を経てどんな変化がありましたか」と

よく聞かれるけど、変わったことは何もないんだよ。

みんなが思っているほど大層なもんじゃない。

行が終わっても何も変わらず、ずーーっと山の中を歩いているしな。

戦後、荻窪の駅までラーメン屋をやってたことがあるんだ。

今でも材料があれば、チャッチャッチャって作っちゃうよ。

今と同じですよ。

人間のすることで、何が偉くて、何が偉くないということは

ないんじゃないかな。

仏さんから見ればみんな平等。

自分の与えられた人生を大事に、

こつこつと繰り返すことが大事じゃないかな。

自分の身の丈に合ったことを、毎日毎日、

一生懸命やることが大事じゃないの。

人間から見た偉いとかすごいこととかなんて、

仏さんから見れば何も変わらないから」

A「ひどいよな。

荻窪駅前の土地を、スズメの涙の立退き料で没収された時には、

目の前が真っ暗になったよ。

そういう時代だったのかもしれないがな。

どんなにひどい目にあっても、時間がたてば必ず、

いろいろなことがあったなあ、と思える日が来るよ。

後になってから意味がわかることもある。

だから、あせることも、自分はだめだと思うこともないよ。

目の前のことをただ、一生懸命やるだけだよ。

人生はその時だけじゃないんだって」

B「行の最中、力尽きてここで倒れて死んだら、

ぼくの体は小山の土になるんだなあと思った。

それがうれしいような気がした。

いろいろな生き物たちの栄養になれるなら、それは幸せなことだなあと。

今でも、どこかを歩いている最中にパタッと倒れて、

そこで埋めてもらって土に還ったらいいなあと思うんだよ。

外国だったら、「どうやら日本人のようだがなあ」なんて言われたりしてな。

だから、「おれが死んだら、念仏はいらないよ」ってよく言っているの。

坊さんが坊さんに経を上げてもらうなんてちょっと照れくさいしな。

死ぬときは「じゃあ、ちょっとそこまで出かけてきますわ」

なんていうのがいいな」

(以上本文より。一部改変)


【著者略歴】

酒井 雄哉(さかい ゆうさい)
比叡山飯室谷不動堂長寿院住職。1926年、大阪府生まれ。太平洋戦争時、予科線へ志願し特攻隊基地・鹿屋で終戦。戦後職を転々とするがうまくいかず、縁あって小寺文頴師に師事し、40歳で得度。約7年かけて約4万キロを歩くなどの荒行「千日回峰行」を80年、87年の2度満行。その後も国内や世界各地を巡礼している。





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