
働き方―「なぜ働くのか」「いかに働くのか」
稲盛 和夫 (著)
¥1,470 (税込)
三笠書房
ハードカバー:189ページ
2009年4月5日 初版
●現代における「最高の働き方」とは?
「なぜ働くのか」「いかに働くのか」
──混迷の時代だからこそ、
あえて「労働が人生にもたらす、素晴らしい可能性」を問いかける!
「平凡な人」を「非凡な人」に変える。
人生において価値あるものを手に入れる法。
●本年年度始めに発売された、京セラ、KDDI創業者、
稲盛和夫さんの最新刊。
我が国を代表する企業家として大変な敬意を集めていることもあり、
名だたる大出版社から、既にあまたのベストセラーを出されているが、
意外にも三笠書房からは初めての出版だろうか?
現在、大手書店では、目に付く場所にうず高く平積みされている人気の本。
●書名にダイレクトに表明されているように、
本書のテーマは、「働くこと」、「労働すること」、「仕事をすること」の
根源的意義一点に絞って語られている。
「仕事をする」ということが軽視されがちな昨今、
どのような目的意識を持って働けば、幸福な人生を生きることに繋がるのか、
稲盛さんの数奇な人生経験を数多く挟み込みながら、
平易な言葉で解き明かしてくれます。
●稲盛さんの著書を何冊か読んだことがある方ならばおわかりのように、
文体は極めてオーソドックス、
良くも悪くも「シンプルイズベスト」の極みとも言える文章で、
何ら痛痒を感じることなく一気に読破できる。
200ページに満たない分量もあり、
多忙なビジネスマンには極めてありがたい書物。
ただ、過去の著書で既出だったエピソードが散見されるという意味では、
新奇性にはやや欠ける内容か。
●心に残ったエピソードは何点かあるが、
因縁浅からぬ関係である松下幸之助との話に、
何か個人的にグッと感じるものがあった。
松下電器(現・パナソニック)系列からの仕事において、
まさに下請けイジメとしか言い様のない
過酷な要求を突きつけられ、一時は恨みに思ったが、
後にアメリカの大企業との更に苛烈な交渉が待ち構えていたことを思うと、
松下に鍛えてもらった、予行練習を行ってもらったという
思いに至り、感謝の念が堪えなかった、という話が特に印象的だった
(やや余談めくが、松下幸之助は、外見の柔和さもあり、
存命時の姿を知らない我々若者にとっては、まさに好々爺そのものという
イメージしか湧かないはずだが、現場で直で接した人の本などを読むと、
鉄拳制裁、罵詈雑言など、
人を人とも思わない暴力的、激高型の姿も併せ持っていたようで、
そのことを思うと、「書かれた本」それのみで、
その人の全体像を表現し尽くしていると即断してしまうのは、
極めて危険なことだという教訓も得られる。
本は素晴らしかったが、実際にその著者に会ってみると、
全く予想とは違った、嫌な感じの人間だったということは
いくらでもありうるということだ)。
●現在、新年度になって2ヶ月ほど経過しておりますが、
せっかく入社できた会社に嫌気がさし始めている新入社員や、
自分の得意分野、希望分野とは違った職種に甘んじている会社員の方や、
額に汗してガツガツ働くのなんてダサい、
楽して大金を稼ぐに限る、などという誤った労働感に
いまだ縛られ続けているお気楽な若者などにお薦めの書物です。
仕事ができる、仕事を与えられたということへの感謝の気持ちや、
世で名を残すためには、どれほどの努力が必要かを
身に染みて痛感できるはずです。
【マストポイント】
@「物質には、「可燃性」、「不燃性」、「自燃性」のものがあります。
同様に、人間のタイプにも火を近づけると燃え上がる「可燃性」の人、
火を近づけても燃えない「不燃性」の人、
自分からカッカと燃え上がる「自燃性」の人がいます。
何かを成し遂げようとするには、
自ら燃える「自燃性」の人でなければなりません」
(ちなみに、稲盛さんは、
「不燃性」の者は会社を去ってもらっても一向に構わない、
少なくとも「可燃性」の社員であってほしいと常々考えていたという)
A「私は、人事を尽くし、後はもう神に祈り、
天命を待つしか方法がないと言えるほど、
すべての力を出し切ったのか。
自分の身体が空っぽになるくらい、製品に自分の「思い」を込め、
誰にも負けない努力を重ねたのか。そういうことを言いたかった。
そこまで強烈に思い、持てるすべての力を出し切ったとき、
はじめて「神」が現れ、救いの手を差し出してくれるのではないでしょうか。
「おまえがそこまで努力したのなら、
その願望が成就するよう助けてやらなくてはなるまい」と、
神が重い腰を上げるくらいまでの、徹底した仕事への打ち込みが、
困難な仕事にあたるとき、また高い目標を成し遂げていくときには
絶対に必要になるのです」
B「(フランスを代表する大企業の)リブー社長が、
「シュルンベルジュ社ではベストを尽くすことをモットーに
している」と話しました。
それに対して私は、賛意を表しながらも、次のような持説を述べました。
「ベストという言葉は、他と比較して、その中ではもっともいいといった意味で、
いわば相対的な価値観である。
したがって、レベルの低いところでもベストは存在する。
しかし、私たち京セラが目指すのはベストではなく、
パーフェクト(完璧)である。
パーフェクトはベストとは違って絶対的なものだ。他との比較ではなく、
完全な価値を有したもので、他がどうであれ、
パーフェクトを越えるものは存在し得ない」。
私はこのように主張しました」
(以上本文より。一部改変)
【著者略歴】
稲盛 和夫
1932年、鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年より名誉会長を務める。84年には第二電電(現KDDI)を設立、会長に就任。2001年より最高顧問。このほか、84年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。また、若手経営者のための経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ。
ラベル:稲盛和夫