2011年04月09日

必読本 第971冊目 平田牧場「三元豚」の奇跡

必読本 第971冊目

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平田牧場「三元豚」の奇跡 

新田 嘉一(著)

潮出版社

¥ 1,470

単行本: 189ページ

2010年11月5日 初版


●どん底に落ちて丸裸になって初めて、成功の扉は開かれた。

平牧三元豚・平牧金華豚をはじめ、

日本初の完全無添加ハム・ソーセージの開発、生産と流通の一体化によるコストダウン、

さらに銀座、日本橋、東京ミッドタウンなど行列のできるレストランの展開まで、

地方発のビジネス・モデルをこの1冊に凝縮。

●私の出身地である山形県酒田市を代表する企業にして、

日本有数の豚肉のトップブランド。

又、独自の生産と流通の仕組みを確立し、

地方を活気づける象徴的な企業として

各種マスコミなどでも頻繁に取り上げられることが多い、平田牧場。

その創業者である新田嘉一氏の、ほぼ初めての著書。

昨年、テレ東『カンブリア宮殿』などに出演し、一気に名前が全国区になった新田氏だけに、

名だたる出版社から本執筆のオファーが殺到したと予想されるが、

なぜか学会系の出版社から出された。

そのあたりの経緯は全く不明。まあ、瑣末なことですが・・・。

●内容的には、幼少期の生い立ちから、

養豚事業に着手するきっかけ、

日本一美味しい三元豚や無添加ウインナーを開発成功するまでの、

血がにじむような苦闘、

流通の王様ダイエーとの取引で全国的に急拡大するも、

非人間的な仕打ちの数々に遂に関係を解消。

独自の流通の道を開発する話などなど、

今現在の何不自由ない栄華からはとても想像できないほどに、

数々の苦難、辛酸を経験しつくしていることにまず驚かされる。

●新田氏は、山形県人ならば知らない人がいないぐらいの

県を代表する有名人だが、

松本清張のような分厚い唇とギョロ目が印象的で、

ほとんど笑顔を見せることがなく、いつも

不機嫌そうというかぶっきらぼうな表情でいる方で、

あまり好ましいイメージを抱いている方は少ないかもしれない。

しかし、本書を一読すると、その先入観が一掃される。

エゴとは無縁で、利他の精神や使命感が非常に強い方なのである。

●空港も高速道路も整備された港もない「陸の孤島」酒田市の未来を憂い、

自ら行政に陳情に行ったり、気前よく多額の自己資金を供出したりなど、

 非常に郷土愛溢れる人だということがわかる。

向学心に溢れていたが、周囲の理解を得られず、

大学進学を断念した苦い過去があるだけに、

地元初の4年制大学の創設、美術館や歴史的建築物の新設、再生など、

アカデミックな分野にも並々ならぬ貢献を果たしている。

本文中、資金繰りに幾度となく苦しめられ、

同業者の中には、自ら命を断つ者まで少なくなかった中、

すんでのところで救われ、生き延びることができたのは、

やはり、エゴのためでなく、地元や従業員を幸せにしたいという

崇高な精神があったからこそではないかと思い知らされる。

●飛ぶ鳥を落とす勢いだった中内ダイエーが、

実際には、取引業者に非常識な値引きや非人間的な対応を繰り返すような

傲岸不遜な輩が多く、遂には破綻までいったという事実は、

クロネコヤマトが三越と絶縁し、鍵山さんのイエローハットが、

テナントとして入っていたスーパーの酷い仕打ちに耐えかねて

撤退した例を出すまでもなく、大いに心に刻んでおきたいことでもあります。

諸行無常。奢れる者は久しからず。

人を泣かせて得たようなお金や幸せは、永続しないということです。

●数々の苦難もものともせず、

一代で企業帝国を築いた経営者の自伝は、

やはり文句なく元気が湧いてきます。

絶対不可能と言われた添加物なしのウインナーを見事開発させたエピソードなど、

新商品開発という意味でもヒントになる点が多い本です。

地元の人間にも関わらず、氏に関して知らなかった事実も多く、

灯台元暗しというか、先入観だけで人を判断してはいけないという

反省も得ました。

何かと暗いニュースばかりが報じられる山形県や東北地方の方々にも

是非手に取っていただきたい名著です。

 

 【マストポイント】

@「私は今までに一度たりとも勤め人になろうと考えたことがない。

人から使われるのは、死ぬほど嫌だった。

他人の後塵を拝すということに耐えられない性格なのだ。

それこそ、小学、中学と学校からの帰り道でも、

まるで競うようにして先頭を走ってきたものである。

何ごとも自分のペースに持っていき、

他人の言うことには従いたくない。

これはこれで反省するところはたくさんあるのだが、

それで70数年も生きてきたのだから、しようがない」

A「私は、平田牧場を始めた頃は、『お願いします』の一言が言えなかった。

取引相手に、『ありがとう』と口にすることもできなかった。

しかし、借金、従業員への給与など、経営者が陥るような、

胃の痛くなるような悩みなど、どん底に落ちて初めて、

やっと『ありがとう』と言えるようになった。

流通で、痛い目に遭い、死のうかと思い悩むところまでいって、

初めて『お願いします』と頭を下げられるようになった。

もっと早くから、そのことに気づいていればよかったと、

随分と後悔したものだ」

B「自分自身、あちこちにお金をばらまいているのに、

会社がちゃんと残っているのは不思議で仕方ない。

結局は、儲けとか利益を一切考えないできたからだと思う。

商売につなげようとか、格好つけようとかではない。

社会にとって必要なお金、使うべきお金は、

使ってもあとで必ず戻ってくるし、時には向こうからやってきた。

それにもともと、雨露をしのげる家があればいいという信条もあった。

子供のころに、どん底に落ちた苦しみを知っているから、家なんて住めればいいのだ。

今の若い人に言いたいのは、『いい車に乗りたいとか、いい生活したいなんて、

どうでもいい』ということである。

なぜなら、自分の生まれた場所を幸せにできない人が、

自分を幸せになどできないからだ。

一回はどん底に落ち、一回は裸になりなさいと、私はよく言う。

その時初めて、格好つけているだけでは人生は華開かないということが、

胸にストンと落ちるはずだと思う」

(以上本文より。一部改変)


【著者紹介】

新田 嘉一
1933年山形県平田町(現・酒田市)生まれ。山形県立庄内農業高等学校を卒業後、養豚を始める。1967年に平田牧場を設立し、無添加ハム・ソーセージなどの食肉加工品の製造販売を開始。70年代に「平牧三元豚」を開発し、豚肉のトップブランドに育て上げた。一方で酒田商工会議所会頭などを歴任し、地域経済の発展や対岸貿易推進に貢献。99年に会長に就任。現在は同社会長のほか、東方水上シルクロード貿易推進協議会会長、東北公益文科大学の理事長なども務めている。





posted by miura at 09:38| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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