2011年12月19日

必読本 第1011冊目 毎日が自分との戦い―私の実践経営論

必読本 第1011冊目

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毎日が自分との戦い―私の実践経営論

金川千尋(著)

日本経済新聞社

¥1,680

単行本(ソフトカバー): 203ページ

2007年7月11日 新版

 

●「人ができないことをやらなければ、私が社長である必要はない」 。

12年連続最高益更新、3年連続2桁成長達成。

高成長を続ける信越化学工業・金川流経営の原点。

●この前、ほぼ毎週チェックするぐらいの愛読誌である『週刊文春』を

読んでいると、正式名は失念したが、

「今年役立ったビジネス書、ダメだったビジネス書」というタイトルの記事があり、

こういうブログを執筆している関係上、どんなものかと興味深く内容に目を通した。

その中に、今年を代表する優良ビジネス書として、

金川千尋氏の『危機にこそ、経営者は戦わなければならない!

(東洋経済新報社。いずれご紹介する機会があるかと思う) が

第一に挙げられており、そういえば、よく聞く会社の社長だが、

一度もその著書を読んだことがないなぁということで、

図書館で借りてきたのが本書。

2006年5月に、日経「私の履歴書」に

まるまる1か月連載されたものを一冊にまとめたもの。

●「私の履歴書」自体が、朝日の「天声人語」と同様、

無駄を極限まで排しつつも、重要なポイントを小気味よく凝縮した

名文で、読みやすさには定評があるところですが、

本書も、いちいちのエピソードが面白いことも相まって、

非常に軽快感をもって読み進んでいくことができる。

私は半日かからず読破してしまった。

●日本統治下の朝鮮で出生し、

名士である父を早くに亡くすも、愛情あふれる母親に

大切に育てられ、文武両道の学生時代を過ごす。

現在、受験シーズンであることの関係でいえば、

猛勉強するも、あと一歩のところで旧制高校合格を果たせず、

精根尽きる果てるほど意気消沈しつつも、母の献身的なサポートもあり、

見事合格を果たすという話や、

才能あふれる学友や教師に恵まれ、

後年その友人たちが各界のトップとして名前を連ね、

色々と著者をサポートし、交流深めるというエピソードを読んでいますと、 

やはり、有力校に入ることは、人脈などの観点から重要だ、

万難を排してでも子息を有名校に入らせたいと願う教育ママさんの気持ちも

わからないではないな、という気にさせられました。

●最新映画が上映される関連でいえば、

著者が敬愛するという山本五十六に関する思いが、

非常に多く綴られているのも、見逃せないところです。

幸いにも、軍人に取られることまでは免れた著者ですが、

日朝ふたつの国を行き来し、

死を覚悟するような極限状態を何度も経験されたという戦争体験のお話も、

相当の迫力をもって読む者の心を大きく揺さぶります。

死病と恐れられた肺結核から奇跡的に回復した経験と併せ、

著者の人格形成において、多大な影響を与えた出来事だったようです。

●初めに入社した商社では、先輩にも恵まれ、

出だしは快調だったのですが、

企業合併のゴタゴタに嫌気がさし、遂には製造業に転職を決意する。

ここで著者の才能が一気に開花。

英語が堪能だったこともあり、海外の営業において、八面六臂の活躍を見せる。

●本書を一通り通読すると痛感するのが、

著者には、危難の時に、事あるごとに援助者が現れるということである。

海外進出先の合弁相手とソリが合わず、

嫌な思いをされたことのある企業関係者は世の中に五万といるはずだが、

著者には、一生の付き合いとも言えるようなビジネスパートナーが幾度となく現れ、

不思議と苦難を解決していくのである。

その温厚そうな人相と実直な性格が、

何か人を引きつけるような魅力を醸し出しているのだろうか。

●それと、特筆すべきは、

そもそもの当初から、無駄なことを一切嫌うという姿勢である。

人員スタッフにしても、つぎ込む資金にしても、

見栄を張ったり、ブームに踊らされることを断固として嫌う

(アメリカのビジネスパートナーが大リーグオーナーになるのだが、

放漫経営がたたり、のちに破滅する例などは、

昨今の横浜ベイの問題を考えるなどする上で、非常に興味深い)。

著者の会社は、無借金経営で毎年増収増益の超優良企業として、

企業関係者ならば知らない者がいないぐらいの評判高き経営者だが、

やはり、固守すべき大原則を守り抜いているからこそ、

こういう業績を達成できるのだと、納得させられる

(しかし、それとは矛盾するかのように、

若き日々にギャンブル狂い、個人投資で大損失という、

意外な過去を持っていたことも隠すことなく披露されている)。

ライブドアも悪かったが、自らの守りを固めていなかったニッポン放送側の

経営者の姿勢にも大いに疑問を抱くなど、

企業合併、企業防衛に関するコメントが非常に多いのも参考になるところです。

●本書は、ビジネス本として読んでも非常に有益な本ですが、

単なる自伝として読んでも、

大いに得るところが大きな本です。

読後は、非常に晴れやかな気分になりつつも、

何か大きな勇気と希望が湧いてくるような効果があります。

他の著書も近日中にご紹介する予定ですので、

御期待下さいませ。

 

 【マストポイント】

@「企業イメージの向上は必要だが、

製造業としてもっと有効に資金や時間を使うべきだった

(バブル期にCMをバンバン流し、

モータースポーツのスポンサーなどに巨額の資金を投資したが、

振るわなかった)。

40数億円もあれば、建物だけなら立派な研究所が2つできる。

ブームにあおられるとろくなことはない。

経営には経営の本道がある」

A「最初に大きく変えたのは新卒採用だ。

昔から、仕事がないのにどうやって定年まで雇用するつもりなのか、

不思議でならなかった。

私は今でも『人を増やすのはいいが、最初に新規の事業を立ち上げなさい』と話す。

すると大抵できない。

仕事のない社員を採用したら、結局は整理せざるを得ず、

会社も社員も不幸になる。

必要な人間以外は初めから採らない。

いったん採ったら大事に処遇する。

これが基本だと思う」

B「信越化学ではどうやって人材を育てているのか。

特別な社員教育法があるのではないか。

そんなふうに尋ねられることが多い。

だが、道はそれぞれの人が自分で切り開くものだ。

私は、実務の面ではいろいろな問題がぶつかるたびに、

すべて自分の力で解決してきた。

もちろん、専門的な知識が必要なときには弁護士や会計士などに話を聞く。

技術なら専門のエンジニアに教えてもらう。

だが、仕事をどうやってなし遂げるかとういことになれば、

やはり自ら切り開くしかない。

誰かに育ててもらうようなひ弱いことでは、

社長など務まらない」

(以上本文より。一部改変)

 

【著者略歴】

金川 千尋
信越化学工業株式会社・代表取締役社長。1926年当時日本統治下の朝鮮・大邱生まれ。50年東京大学法学部卒業、極東物産(現三井物産)入社。62年信越化学工業に入社し、70年に海外事業本部長となる。78年塩化ビニール事業の海外子会社、米国シンテック社長に就任、塩ビ事業を世界最大規模に成長させた。90年シンテック社長と兼務で、信越化学工業の代表取締役社長に就任。2007年3月期決算では12期連続で最高益を更新。



posted by miura at 14:44| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 自伝・一日一話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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