
二宮翁夜話 (中公クラシックス)
二宮 尊徳 (著), 小林 惟史 (その他), 児玉 幸多 (翻訳)
中央公論新社
¥1,733
単行本:266ページ
2012年3月9日 初版
●実践的篤農家であり、国学・儒学・仏教に通じ農政哲学を追究する求道者でもある。
そして財政再建のプロ。尊徳翁、かく語りき。
●愛読者様にとっては、大変長らくのご無沙汰です。
更新を長きに渡って怠っておりまして、本当に申し訳ない次第です。
今回は、真に紹介する意味がある本に久方ぶりに出合えたましたので、
名著紹介ブログを再開したいと思っております。
その本といいますのは、二宮尊徳の歴史的名著である、
『二宮翁夜話』でございます。
●過去、私のブログにおきましては、
2度ほど、この本の紹介はしております(こちらを参照)。
自己啓発本を熱心に読んでおられる方ならば、
知らない人がいないというほどの名著中の名著である本書ですが、
日本経営合理化協会の本は福沢諭吉1枚という高額本、
そして廉価版の本は軒並み絶版でプレミアがついているという、
入手へのハードルが非常に高い本でありました。
●本文は、細かい文字がビッシリと詰め込まれ、
老眼の人にはやや厳しいところだが、
訳文は現代的で非常に読みやすい。
『論語』のように、有用なメッセージが満載の小話が
ズラーっと並べられていて、
読むごとに引き込まれる。
私自身、尊徳の全集まで調べるほどの専門家ではないので
断定めいた事は言えないが、
氏を代表するような名言箴言の類
(例・積小為大)は、ほぼ本書に網羅されていると思われる。
ということは、本書を買えば、百科事典のような高額本も、
目ん玉が飛び出るような絶版本も買う必要がないということだ
(ただ、過去に紹介した2冊は、それはそれで利点も少なくなく、
懐に余裕のある人は是非ゲットしておきたい)。
●価格は1,733円(税込)とやや高額です。
アマゾンで調べると、「中公クラシックス」シリーズは、
新書本にもかかわらず、結構な高値を付けている。
つまり、それぐらいの価値はあるシリーズだぞ、ということか。
愛読者としては、
長きの使用に耐えるハードカバーではダメだったのかという
失望感がややありますが、まあ出版してもらっただけでも御の字、
外観部分には目をつぶるべきでしょう。
二宮さんの本は上述したように、なぜか入手困難で、
本書も、いつ何時絶版になるかわかったものではない。
多読は時間的に無理、
少量の大名著をトコトン読み倒したいという方には格好の一冊です!
今のうちに是非どうぞ♪
【マストポイント】
@「翁は言われた。
大事をなそうと欲すれば、小さな事を怠らず勤めよ。
小が積もって大となるものだからだ。
およそ小人の常で、大きな事を欲して、小さな事を怠り、
できがたい事を心配して、できやすい事を勤めない。
それで、結局は大きな事ができないのだ。
大は小を積んで大になることを知らないからだ。
よく励んで小事を勤めたならば、大事も必ずなるだろう。
小さい事をゆるがせにする者には、大きな事は決してできないものである」
A「翁はこう言われた。
方角で事の禍・福を論じ、日取りで吉・凶だということが昔からある。
世間の人はそれを信じているが、そんな道理があるはずがない。
禍福や吉凶は、方角や日月などの関係するどころではない。
それを信じるのは迷いだ。
禍福や吉凶というものは、自分の心と行いとが招くから来るものであり、
また過去の因縁によって来るものでもある。
古語に、
「積善の家に余慶あり。積不善の家に余殃(よおう。不幸の意)あり」と
いっている。
これは古今を通じて動かない真理だ。
決して疑ってはいけない」
B「人は、生まれれば必ず死ぬものだ。
死ぬべきものだということを前に決定(けつじょう)すれば、
生きているだけ日々が利益だ。
これが私の道の悟りだ。
生まれ出たうえは、死のあることを忘れてはいけない。
夜が明ければ暮れるということを忘れてはならない」
(以上本文より。一部改変)
【著者略歴】
二宮尊徳
1787~1856。江戸後期の農政家。名は金次郎。相模国栢山村(現、小田原市)の農家に生まれた。家の没落に遭うが、20歳で一家を再興する。小田原藩家老・服部家の家政再建を任され、それを契機に藩主大久保忠真に見出され、分家宇津家の下野国桜町領の再建を成功させた。小田原藩領の農村救済に「報徳仕法」を実施し、実践的合理主義と精神主義を折衷する篤農哲学を披露し、老中水野忠邦に幕府役人に取り立てられると「日光領仕法雛形」を作成した。
児玉幸多
1909年生まれ。東京帝国大学国史学科卒。学習院大学教授、学長を経て同大名誉教授。日本近世史、農村史、近世交通史専攻。2007年逝去。
ラベル:二宮尊徳