2007年04月07日

必読本 第320冊目 真贋

必読本 第320冊目

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真贋

吉本 隆明(著)

講談社インターナショナル

1,680円(税込)

単行本:238ページ

2007年2月22日 初版



●毒にも薬にもなるモノの見方、ヒトの見方。

常識的な「問い」と「答え」が氾濫する世の中に真っ向から対峙する。

現代を生き抜くための究極の視点から、

今、本当に考えるべきこととは何かを問う。

●「吉本隆明」という名前を聞いたら、

皆さんは何を想起するだろうか。

若い読者ならば、「よしもとばななの父親」というぐらいの

イメージしかない方も多いかと思うが、

私ならば、やはりあの大作「共同幻想論」の著者、

「戦後思想界の巨人」という言葉を真っ先に

想起してしまう。

大学生時代は「ポストモダンブーム」があったこともあり、

よくわかりもしない柄谷行人、浅田彰などの思想書を

格好をつけて買い求め、

ろくに読みもしないで本棚の肥やしになったりしたという

苦い思い出もあったりした。

ほとんどそれ以来と言ってもよい、吉本氏の本との「邂逅」である。

●本のタイトルの素っ気無さといい、装丁
の重々しさといい、

読むのに四苦八苦する、あの
吉本ワールド全開の難解本かと

恐る恐る手にとってみたのだが、

何のことはない女性編集者からのインタビューを元に

編集された本だった。

よって、文章は口語体で極めて読みやすい。

後述するように、扱われているトピックも

現代人に馴染みが深いものが多く、

肩がこらずにスイスイ読めます。

●川端、三島、谷崎、太宰、埴谷、W村上などの

日本文学作家論から、田中角栄と田中真紀子論、

ホリエモン、村上ファンド現象、オウム真理教事件、

更にワールドカップ日本代表惨敗が意味したものなど、

やはりさすがと言うしかない

守備範囲の広さと鋭敏な観察眼である。

本年83歳になんなんとする老人とはとても思えない

筆法鋭い理論が最後まで展開される。

やはり「現代思想の巨人」の名に恥じない。

●「あらゆるものには毒にもなれば利にもなる部分がある」や、

「人の噂話や事情通から持ち込まれる裏話などの

類を信用せず、あくまで自分の「肌感覚」で物事を判断していく」など、

吉本さんを当代隋一の思想家たらしめた、

批評上の秘密が惜しげもなく開陳されている。

「ものの見方」を学ぶ上で極めて参考になるはず。

是非とも学びたい。

●この本で一番印象に残ったのは、

いわゆる「戦争論」に関する件である。

あの太平洋戦争の真っ只中で、

戦地に赴かず、内地に留まったという意味において、

後年、他の評論家から様々な非難も多かった吉本氏であるが、

戦争に、いい戦争も悪い戦争もありはしない、

あらゆる戦争を例外なく否定するという断固たる姿勢には、

極めて学ぶべきものが多かった。

戦争前後の日本内地の詳細な状況、

アメリカ軍の紳士的な振る舞い、

軍国主義者から戦争否定論者に「転向」した経緯を

記した箇所など、実に面白く読めた。

昨今議論がかまびすしい憲法改正、靖国神社、

日中問題などを考える上で、極めて示唆に富む部分だと思います。

 

【著者略歴】

吉本 隆明
1924(大正13)年、東京・月島生れ。2003(平成15)年、『夏目漱石を読む』で小林秀雄賞受賞。文学、社会、政治からテレビ、料理、ネコの世話まであらゆる事象を扱う「思想界の巨人」。

posted by miura at 19:15| 山形 ☁| 自己啓発(に外れたものも一部あるよ 笑) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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