必読本 第379冊目
ホームランを打ったことのない君に
長谷川 集平(著)
¥ 1,260 (税込)
理論社
ページ記載なし
2006年1月 初版
●けがをしても野球への情熱は失わない、野球部出身の仙吉。
いつかホームランを打つ。あきらめずにがんばろう…。
夢に向かって歩き続けることの大切さを、野球が大好きな少年と、
野球を愛し続ける仙吉との交流をとおして描く。
●主人公の少年は、野球の試合の大事な場面でホームランを狙って
大振りをしてしまい、最悪のダブルプレーを喫してしまう。
意気消沈して帰る道すがら、野球部出身の仙ちゃんというお兄さんに出会い、
どうやったらホームランを打てるのか、それだけではなく、
野球がうまくなる秘訣など色々なことを教えてもらう。
帰宅後、その仙ちゃんには、
実は思いがけない秘密があることが判明するのだった・・・。
●著者は熱狂的なダイエーホークスファンとのこと。
巻末にそのユニホームを着た著者の写真も掲載されている
(本文に出てくる架空のプロ野球選手「象島」は、
おそらく現シアトルマリナーズの城島をモデルにしているはず)。
野球を題材にした絵本があまりないことを疑問に思い、
自ら書いてみようと思ったのが本書発刊の理由だのことです。
●私事で恐縮ですが、私自身も子供のころ野球をしてました。
ただし、小学生のころは違うスポーツをやっていて、
中学校の野球部からの遅いスタートでした。
よって、まわりの部員はほとんどが小さいころから野球をやっているものだから、
当然守備も打撃も格段にうまい。
私は、試合に運良く出してもらう機会があっても、
いつも7番、8番の期待されていない下位の打順。
何球目を打てばよいのか、どういう風に振ればヒットになるのか
皆目わからず、いつも凡退。
この本の、ヒットが出ない主人公の気持ちが痛いぐらいわかる
(少々自慢めくが、中3時には努力が実ったのか、
4番バッターにまで昇格できました)。
●今華々しく活躍しているイチロー、松井秀喜などの名選手は、
はじめからズバ抜けて野球がうまかった、
子供の頃からガンガンヒットやホームランを飛ばしていたと一般人は思いがちである。
しかし、彼らだって野球を始めた当初は、
なかなかバットにボールが当たらず、
四苦八苦していた時期が必ずあったはずである。
人が見ていなくても、毎日毎日、素振りなどの地味な練習や
名選手の打撃フォームを研究したり、教則本を読んだりの訓練を常に欠かさなかった。
自分の夢を絶対に諦めなかったから、最終的に今の栄光がある。
●野球を愛する方ならばもちろん、
今何か自分の夢に向かって一生懸命に頑張っているすべての方に
読んでいただきたい本です。
継続すること、初心を貫徹すること、夢を絶対に諦めてはいけないことなど、
実に多くのメッセージが読み取れる、優れた絵本です。
【著者略歴】
長谷川 集平
1955年兵庫県姫路市で生まれる。武蔵野美術大学中退。1976年のデビュー作『はせがわくんきらいや』で創作えほん新人賞を受賞。児童文学『見えない絵本』(理論社)で赤い鳥文学賞、『鉛筆デッサン小池さん』(筑摩書房)二作で路傍の石文学賞を受賞。1991年より長崎市在住。