必読本 第412冊目
健康問答 本当のところはどうなのか?
本音で語る現代の「養生訓」。
¥ 1,470 (税込)
平凡社
単行本: 276ページ
2007年4月4日 初版
●どっちがホント、病気にならない健康法。
医者にかからない作家とホリスティック医療の最高権威の医者が、
長寿法・健康法への素朴な疑問に答える。元気に長生きするための本。
●かつて、『養生の実技』(必読本第258冊目参照)という本で、
世間の常識と真っ向から対立するような
トンデモない健康法を披露して
物議を醸し出した五木さんと、日本におけるガンの代替療法の
権威として名高い帯津良一さんの対談集。
今話題のベストセラーで、どこの本屋さんでも
うず高く平積みされて順調に売れ続けているようである。
●水、酒、牛乳、肉、玄米、サプリ、温泉、睡眠、
ウォーキングなど、日々我々を悩ませている種々の
人気健康法に関して、五木さんが問いかけ、
それに医療者としての帯津さんが回答していくという
構成になっている。
全50個ほどのQ&Aが並んでいるのだが、
我々の耳目を集めるような人気のテーマは
ほぼ網羅されていて、抜かりがない。
そしてひとつのテーマごと、
余計なことをグダグダ述べずに、
シンプルにまとめられているのが多忙な人間にはよかった。
この手の本はえてして冗長な内容になりがちなのだが、
お二人の時間的な制約もあったのか
小気味よく話が進んでいくのが非常に読みやすい。
末尾に「医者の結論」として、
ポイントが箇条書きでまとめられているのも何かと便利である。
●安保徹、久司道夫、新谷弘実、石原結実、
幕内秀夫、柳原和子、アンドルー・ワイルなど、
健康法に少しでも関心がある方ならば、
誰でも知っている著名な方々のお名前もバンバン出てくる。
この手の繊細なテーマの本では、
実名を挙げて同業者の治療法、思想の評価を
云々したりは普通はしないはずだが、
お二人がそれらの著名な方々に対して、
どのようなお考えも持っているのかを忌憚なく語っておられるのは、
実に貴重で、読んでて非常に参考になる
(個人的には断食療法の権威甲田光雄先生と、
ナチュラルハイジーンの権威、ダイヤモンド夫妻へのコメントが
出てこなかったのはちょっと残念だった。
それと、セックスに関するお2人の意見も是非聞いてみたかった)。
●しかし、この本を読破して痛感したのは、
五木さんも帯津さんも、単なる健康、長命、治癒などを
超えた一歩上のレベルから、人間の体、病気、医療を
見つめているという、その広くて深く、柔軟性のある健康観である。
これひとつやれば必ず治るという薬、医療法などない。
肉や酒も大いに結構、あるがまま、楽しく生きることが大事だよ。
高価で、かつ、人相が悪い人から健康食品を買ったらいけません。
「場」の空気が悪い医療施設は治るどころか、
悪化するだけだから行ってはいけない、など、
さすがという卓見が次から次へと出て来ます。
医療関係者は襟を正さなくてはいけないような
鋭い指摘も多いですよ。
●今現在何か慢性病やダイエット問題を抱えて、
色々な健康法やサプリメントの間を「漂流」しているような
健康ジプシーの方、
自分の養生法や死生観に確固とした信念が
固まらず、マスコミや健康食品産業の
意見についつい振り回されがちな方、
世界有数の裕福な国にもかかわらず、
日本の医療、福祉などに何か不信感や不満を常日頃抱かれていたような方などは、
是非ともご一読をおすすめいたします。
健康、病気、人生、死に際などに対して、
一本の芯が通るような本です。
売れているのも納得の1冊でした。
【著者紹介】
五木 寛之
1932年福岡県生まれ。『蒼ざめた馬を見よ』で第56回直木賞、『青春の門 筑豊篇』ほかで第10回吉川英治文学賞を受賞。81年より一時休筆して京都の龍谷大学に聴講生として通学。ニューヨークで刊行された英文版『TARIKI』が2001年度ブック・オブ・ザ・イヤー(スピリチュアル部門)に。2002年、菊池寛賞を受賞。2004年、仏教伝道文化賞を受賞。
帯津 良一
1936年埼玉県生まれ。61年東京大学医学部卒業。都立駒込病院外科医長などを経て、82年帯津三敬病院を開設し、現在は名誉院長。西洋医学に中国医学や代替療法を取り入れ、ホリスティック医学の確立を目指す。日本ホリスティック医学協会会長、日本ホメオパシー医学会理事長、調和道協会会長などを務める。
帯津三敬病院 公式ホームページ http://www.obitsusankei.or.jp/