必読本 第514冊目
奇跡を呼ぶ男 落合博満物語
綾野 まさる(著)
1,300円(税込み)
小学館
単行本: 194ページ
1999年4月1日 初版
●プロ野球の世界は、とてもきびしいところでした。
やめてしまいたいと何度もくじけそうになりした。
でも好きという気持ちがほかの人よりも強かったから…。
三冠王三度、奇跡の一打。
史上最強の四番打者が、熱く語る野球生命。
●プロ野球関係者の中では、
落合博満という人は、とりわけ
興味をそそる人物の中の一人である。
改めて言うまでもなく、唯一の3冠王3回達成者、
監督になってからも、コーチ経験が皆無なのにもかかわらず、
監督一年目からいきなりきちんとした結果を残し、
よく言われる「名選手必ずしも名監督にあらず」という
ジンクスを見事にはね返した。
●引退後の解説者時代も、
各方面に波風が立つことを恐れ、
あまり突っ込んだことをテレビでは言わないものだが、
落合さんはそんなことお構いなく
ズケズケと一刀両断の解説することが多く、
文句なく本質的なことを喋れる希有な野球人だと
思ったものだ。
●又、監督になってから実に素晴らしいと思ったのは、
試合中ベンチに座っていても、
ほとんど己の感情を露にしないことである。
選手がホームランを打ったら大喜びし、
凡プレーをしたりすると、ベンチを蹴飛ばしたり、
物を投げたりなど、激高したりする監督が昨今多いことを
考えると、この冷静沈着な態度は特筆に価する。
かねがね、指導者はかくあるべきだと思っていた。
●先般のクライマックスシリーズで、
巨人を3タテして更に名声を上げたこともあり、
あらためて落合博満という人物のことが知りたくなった。
ちょっと古く、子供向けの本だが、
今回はこの本をご紹介致します。
●しかし、落合さんは、自分のことだけを考える利己主義者かと
誤解されることもあるが、意気に感じるというか、
稲尾和久、長嶋茂雄など、心から尊敬している人のためならば、
命を賭けるほどの力を傾注し、師匠のために尽くすという
仁義の人なのである。
目上の人間に敬意を払わない人が多い昨今、
これは見習いたいところである。
●又、落合選手の徹底した、一匹狼のマイペース主義も
是非とも記しておかなければならないところである。
冷静沈着な自分の目で考えた練習法、生き様は
時に「オレ流」などと揶揄され、散々批判もされてきたが、
明日の生活も保証されておらず、
自分のバット1本で生活していかなくてはならない
プロならば、ある意味当然な姿勢なのである。
(しかし、一匹狼のわりに、落合さんは
威張り散らすようなことや暴力的なことは
後輩に行わず、意外に面倒見が良いのは素晴らしい長所だ)。
●徒党を組まず、まわりの雰囲気に流されず、
常に正しいもの、自分にとって大事なことに
固執し、己の信念を貫くという姿勢はやはり賞賛に値する。
名球会入り拒否など、己の信念に沿わないものには
妥協しないなど、プロの職業人としては見習いたい部分である
(ただ、この件は、新人の頃、前任の金田正一元ロッテ監督に、
打撃フォームをケチョンケチョンに酷評されたことを
根に持った落合さんが、名球会のドンである金田さんに対して
反旗を翻したという見方もできる)。
●又、落合選手の成功の陰には、
信子夫人の存在が大きいと言われるが、
全くその通りであると本書を読んで思った。
男の出世や成功の陰には
必ず良妻がいるものだという典型例であろう。
家庭内で、男を奮い立たせるトーク術、細かな心配りなど、
女性ならば見習うべきエピソードが多い。
「悪妻は百年の不作」ということわざと共に、
見てくれだけではない本物の女性を
女房にしなくてはならないという教訓を得られる。
●ヘンテコなユニフォームを着ているカバー写真や、
時勢に合わない記述が散見されるため、
既に絶版になり、古本価格は結構なプレミアがついている。
野球少年のみならず、大人が読んでも
面白い自伝なので、古本屋さんか図書館ででも
探してみて下さい。
【マストポイント】
@野球が大好きだったが、理不尽ないじめや暴力が
横行する高校野球時代や、実力がないくせに、
年長だというだけで威張っている先輩の多い大学野球時代には、
全くやる気が起きず、才能は開花しなかった。
やはり、環境が大事。
実力者でも、その場の環境が悪いと全く実力を発揮できない。
悪い環境を甘受せず、自分に合った環境を求めること。
A18歳から22歳ぐらいなどの年齢でプロ入りする人が
大勢を占める中、落合さんは25歳という遅咲きでプロ入りした。
タモリさんが芸能界入りしたのは30歳を過ぎてから。
遅く入ったことが、必ずしも不利になるわけではない。
Bスポーツでは、自分が見てホレボレするような
理想的なフォームの先輩を見つけ、ひたすら真似をすること。
野球や剣道やゴルフに代表されるように、
「型」、「構え」がキレイな人はまず間違いなく実力が伸びる。
落合選手の打席での構えの美しさや
はらうような独特の打ち方は、
先輩の捕手、土肥健二というモデルを真似し、
並々ならぬ練習と研究の末、完成されたものだった。
【著者略歴】
綾野 まさる
本名・綾野勝治。1944年、富山県生まれ。67年、日本コロムビア入社。5年間のサラリーマン生活後、フリーライターとして、特にいのちの尊厳に焦点をあてたノンフィクション分野で執筆。94年、第2回盲導犬サーブ記念文学賞受賞。









