必読本 第519冊目
影響力の武器[第二版]
ロバート・B・チャルディーニ(著), 社会行動研究会(翻訳)
¥ 2,940 (税込)
誠信書房
単行本: 496ページ
2007年8月31日 初版
●承諾誘導のプロの世界に潜入した著者が、
彼らのテクニックや方略から「承諾」についての人間心理のメカニズムを解明。
情報の氾濫する現代生活で、だまされない賢い消費者になると共に、
人を説得するやり方を学ぶ。
●人間が「承諾する」という行為の裏に、
どのような原理が巧妙に作用しているのかを
社会心理学の観点から詳らかにした
歴史的大傑作の増補改訂版。
土井英司さんを始めるとする多くの有名作家、マーケッターが
絶賛したことにより、専門書にもかかわらず、
驚異的な売れ行きを誇ったことでも有名な本です。
●前著(必読本第12冊目参照)からの変更点は、
著書を読んで色々と感銘を受けた読書からの
実体験レポートが14個ほど随所にはさみ込まれ、
それに簡単な著者からの意見が付されていることである。
前著が現在手元にないので、詳しく照合できないのだが、
一部文章も加筆されたり、図表の類にも変更があるようだ
(前著より100ページ分増えている)。
●本文の骨子は同一なので、
無理して絶版になっている前著(ちなみに定価は3,465円(税込み)で、
本書よりも高かった)を買うよりも、
内容も洗練され、使い勝手の良くなった本書を買えば事足りるでしょう。
●しかし、一見すると、心理学の専門家だけが手にするような
分厚い本で、3,000円もするし、
無味乾燥なカバーで、一般人には敷居が高い印象を与える。
章末には「まとめ」、「設問」、「クリティカル・シンキング」などの
課題があるのも、いかにも大学の心理学のテキストらしい。
そう簡単にホイホイと書店で売れる本ではない。
●しかし、前著の書評でも書きましたが、
セールス、マーケティング関係の方ならば、
「生涯の教科書」とも言える本で、
読んでいなければまずモグリと言われても仕方ない必読本です。
類書を全部脇に押しやっても、真っ先に読むべきでしょう。
本文にも、セールスや交渉術に使える
テクニックを無数に発見できるはずで、
付箋、アンダーラインでビッチリ汚れまくること必定です。
●霊感商法、インチキ投資話、ニセモノ健康食品、キャッチセールス、
ケータイ詐欺などがいまだに世間で蔓延していることを鑑みると、
一般の人々にも是非とも一読をおススメしたい。
本文で扱われている事例も、通俗的なことが多く、
意外に読みやすいはずである。
剣呑な事件に簡単に巻き込まれがちなこのご時世、
「転ばぬ先の1冊」として、是非とも常備しておきたい。
【マストポイント】
@人間にイエスと言わせるために使うことが
できる戦術として、「返報性、一貫性、社会的証明、
好意、権威、希少性」という6つの強力な武器がある。
その原理に通暁すれば、セールスマンならば
驚くほど成約率を高めることができるし、
消費者ならば、広告などにひっそりと隠されている
巧妙なワナを見破ることができ、
余計なものを買う被害に遭わなくなる。
A万物の霊長である人間であっても、
その行動様式は、他の動物などど大して変わらないぐらいに
実に単純で、ある種の自動化された習性を持っている。
イライラしていたり、忙しすぎたりして、
自分の頭を使って物事をよくよく見極めないと、
わかりやすいぐらいにあっさりと、他者に騙されてしまうということだ。
B言うまでもないことだが、この種の戦術の悪用は厳禁である。
昔から使われてきた悪徳セールスや宗教の勧誘、
インチキな募金の手練手管を知る意味でなど、
防衛的な意味で利用すべきである。
【著者略歴】
ロバート・B.チャルディーニ
米国を代表する社会心理学者の権威。現在、アリゾナ州立大学教授。 本書は、わかりやすい語り口で、科学的真理に依拠した社会心理学の名著として、本国のみならず、世界各国で高い評価を得た。