必読本 第523冊目
よみがえる商人道
藤本 義一(著)
¥ 1,260 (税込)
日刊工業新聞社
単行本: 206ページ
1998年5月26日 初版
●政府・政治・政策を信じないところにこそ、商人の意地と力が宿る…。
江戸商人の生きざまを今に伝える藤本商人道の決定版。
商人に常禄なし、立身に限りあり、早耳の早倒れ、
手代の仕損じ主の罪、先用後利、借金心得、商人の女房等。
●本書は、斎藤一人さんが推薦書として
挙げられたことで一躍有名になった本です。
最近では、本田直之さんの処女作でも、
ビジネスの原理原則本として推薦されている。
ずっと探していたのだが、
古本屋さんでもなぜか置かれている所を見かけず、
やっと先週見つけたので、今回はこの本を書評します。
●著者は、あの『11PM』などの司会でも
有名だった作家の藤本義一氏である。
現代の商売人にも役立つ、
往年の江戸商人、大坂商人の
商売のコツ、商売道の要諦を紹介していく内容となっている。
元は、商業系の新聞に連載されてあったものである。
●本文では、
井原西鶴の『世間胸算用』、『日本永代蔵』などの文章を豊富に引用し、
著者が実際に見聞きしたエピソード(松井秀喜、
野村克也などの名前も見られる)も交え、
商売上注意すべき点や成功法則などを挙げていく。
1話2〜3ページほどの短いエッセイなので、
スイスイスイスイ読めます。
●本書の中では、特に、質屋商人だった父君と藤本氏の
やりとりがとても面白い。
名目的なことを嫌い、実利に徹したそのナニワ商人魂は、
がめつさの中にも何か物事の本質を見抜くような
したたかさ、ある種のバランス感覚を感じさせる。
『ナニワ金融道』、中谷彰宏さんに通じるものがありますね。
お金にだらしない人にはハッとさせられることが
多い本です。
●いっぱしの商売人ならば、
一度は目を通しておくべき基本書と言えるでしょう。
資金繰り、在庫管理、物の値付けの仕方、
接客、子弟の教育、相続問題などなど、
商売人であれば当然突き当たる各種の問題に対する
回答をそこかしこに見つけることが出来るはずです。
一人さんがいかにも好みそうな本で、
お弟子さんなどに推薦していたのも
納得の1冊です。
【マストポイント】
@「商人に常禄なし。稼ぐは一生のつとめ」
商売人には、公務員のように定収入はない。
牛のよだれのごとく、蟻の歩みのごとく、
常に努力、工夫を重ね、利潤を生み続ける。
A「有卦(け)頼むべからず、無卦愁うべからず」
いい占いだったからといって、信用してはならないし、
悪い占いだったからといって、退くこともない。
大阪から見て、鬼門である門真市に工場を建設することに
周囲から反対されても、松下幸之助はそんなことには耳を貸さず、
最終的には世界的メーカーとして大成功した。
斎藤一人さんも、鬼門だからこそ俺が行って良くしてやる、
厄年は飛躍する年だから気にすることはないなどと
迷信の類を一蹴している。
占いは所詮そんなもの。
又、占いは「売らない」に通じ、
本来金を要求する占い師はおかしいと思わなくてはならない。
法外な金を要求する八卦師はニセモノの可能性が
限りなく高い。
B「商は笑なり、商いは飽きない」
同音異義語で巧みに商売人の心意気を伝えた
江戸商人の諧謔精神、遊び心を
現代人も忘れたくないものだ。
厳しい商売の世界でも、笑いがあるから長続きする。
【著者略歴】
藤本 義一
1933年、大阪生まれ。大学在学中からラジオ・テレビドラマの脚本、舞台台本を手がけ、67年『つばくろの歌』で芸術祭戯曲部門の文部大臣賞を受賞。74年『鬼の詩』で第71回直木賞受賞。歴史、教育、文化、風俗など幅広い分野で執筆活動を行う。





