2007年11月22日

必読本 第535冊目 21世紀 仏教への旅 日本・アメリカ編 (21世紀 仏教への旅)

必読本 第535冊目

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21世紀 仏教への旅

日本・アメリカ編 (21世紀 仏教への旅)

五木 寛之(著)

¥ 1,785 (税込)

講談社

単行本: 246ページ

2007年9月28日 初版

 

TARIKIは自力で生きるアメリカ人を救えるか。

一宗派の教義にとどまらず、

普遍的な他力思想のありかたを追求する著者が、

アメリカの現状を知り、さらに他力の可能性を見出し、

論を深めていく。

シリーズ完結編。

●前半部では、

法然、親鸞が説いた「他力」思想を

考えるために、

比叡山、上越などを五木氏が実際に旅する。

五木氏の説く「他力」という概念は、

あまりにもあっさりとしているせいもあり、

非常に誤解されやすく、その言わんとしていることを

正確に理解している人は少ない。

本文でも記されているように、

「自力」の反対語で、自分でやるべきことをすべて放棄して、

安易に他のものにすがろうという、イージーな生き方と

捉える人が少なくないのだ。

「他力本願」などの言葉が影響しているからだと思う。

●しかし、五木さんが唱える他力というものは、

そんないい加減なものではなく、

わが身の陰の部分、無力な部分を謙虚に認め、

何か自分の存在を超越した大いなる存在に身をゆだねてみよう

という考えなのである。

根無し草「デラシネ」として、常に自分の意のままにならない人生を送り、

変転を繰り返し来た五木さんが、自分の人生観から導き出した、

口先だけではない、血の通った教え、魂からの思想なのである。

●テレビ放送で見られた方も

多いかと思うが、名医としても有名なバーニー・シーゲル博士との

対談での衝突、対立は、日本人とアメリカ人の価値観の違い、

東洋と西洋の文化、思想の違いを象徴的に示していたかと思う。

かの地の人間の成功哲学、人生観というものは、

とにかく曖昧なものを許さず、

黒か白かはっきりさせたがる。

また、人は勝者、強者でなくてはならない、

負けるなどもってのほか、

自分以外の力に頼るのをよしとせず、

自立的、開放的、楽観的に生きるのを旨とする。

アメリカはそういう方法論で、今まで

我が世の春を謳歌してきたが、くだんの9・11テロを境に、

一気にその価値観が崩壊した。

●その一方、

コロンビア大学教授で、仏教研究の第一人者である

サーマン教授(ちなみに、女優のユマ・サーマンは教授の次女)や、

五木氏の本に目を開かれたという、武術家でもあり、

カイロプラティックを業とする男性との対談では、

何かアメリカ人の病理、本書で言うところの

アメリカ人の「心の穴」を埋めるような本質的な意見、

鋭い指摘が随所に示されている。

心の空虚感が問題とされる我々日本人にも

ヒントになるようなお話の多い箇所なので、

特に精読したい。

●アメリカがよしとしてきた概念、価値観は、

現在岐路に立たされている。

ハリウッドのバイオレンス映画に代表される、

戦争至上主義、拳銃発砲事件に見られる暴力主義、

白人と有色人種(又は、持てる者と持たざる者)との格差社会、

高脂肪、高カロリーの食事を好み、

肥満人口が極めて高いなど、

各種の問題が長年叫ばれつつも、ずっと放置されたままである。

●キリスト教信者が極めて多く、

その信条や価値観を礎に、文化や経済が発展してきている

アメリカという大国で、東洋文化の代表とも言える

仏教思想が容易に根付くとは思えないが、

今数多く騒がれている問題をブレークスルーする力が、

仏教には内包されているかと思う。

いつになっても相互対立、内部紛争ばかりしている

キリスト教に見切りをつけ、

インドのヨガ思想や、仏教への帰依を

示す西洋人が最近とみに増えていることは、

やはり精神的な空漠感、孤独感を感じている人が

多いこと、そしてなおかつ、西洋的な方法論だけでは

様々な問題が解決不能になっていることを示しているのだろう。


【マストポイント】

@何か自分の力を超えた大いなる存在、

「他力」というものに、

素直に従って生きることは、非常に大事なことである。

A対立を煽る様な宗教、

他宗教を排他、批判ばかりする宗教には

絶対に近づかない(宗教に限った話ではないが)。

宗教という言葉の元に、

今まで散々、戦争やテロが行われてきたことを

忘れてはならない。

「正しい」宗教ならば、愛や平和や協調や許しや心の安定を必ず説くはず。

B物質至上主義、勝利至上主義、自力至上主義は、

アメリカを見ればわかるとおり、

行き詰まりを見せている。

いくら勝利を収めても、莫大な富を得たとしても、

心の平安、他者への慈しみなどがなければ、

幸せは長続きしない。

新しい価値観や思想体系が求められている時代である。



【著者略歴】

五木寛之(いつきひろゆき)
1932年(昭和7年)福岡県生まれ。生後まもなく朝鮮にわたり戦後47年引揚げ。66年「さらば、モスクワ愚連隊」で小説現代新人賞、67年「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞、76年「青春の門」筑豊編ほかで吉川英治文学賞を受賞。
現在直木賞、泉鏡花文学賞など多くの選考委員をつとめる。最新作に「21世紀仏教への旅」シリーズ、「林住期」など。

ラベル:五木寛之
posted by miura at 17:56| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 精神世界・不思議系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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