必読本 第538冊目
老子 (図解雑学)
蜂屋 邦夫(著)
¥ 1,470 (税込)
ナツメ社
単行本: 230ページ
2006年8月3日 初版
●「老子」には、ことわざや格言、逆説による真理の追究、
受動性や柔弱さの尊重、女性や赤子の理想化などが説かれており、
内容は複雑かつ豊富。
その多面性を伝統的な「老子」解釈から、
学説まで反映して解説する。
●ご存知のように、
「老子」には、反語的表現、逆説的表現が
大変多いことで有名である。
又、一読しただけでは意味が判然としない、
難解な言い回しが多いことでも知られる。
●よって、「老子」本体を読んでいても、
意味不明ですっ飛ばしてしまったり、
理解してないのに理解したつもりになっていたりなど、
満遍なく意を汲み取っていないことが
個人的にずっと気になってはいた。
本書は、そういう悩みを解決するために手にとった
参考書的意味合いの本である。
●本書は、以前、ユングの本(必読本第530冊目参照)でも
取り上げた同じ出版社の速習本シリーズです。
右ページに解説文を、左には
イラストなどの図表類を配置する。
「老子」本文を読んでいるだけでは理解しづらい所を
噛み砕いて解説してくれているので、
今までモヤモヤしていたことがかなり鮮明になる。
●この手の速習本というのは、
何か安直な感じがして、
ずっと好意的には思っていなかったのだが、
読んでみると意外にまとまりがよく、又、視覚的にも
イラストや図表を多用しているので、
漫画世代の若い読者にも抵抗が少ない。
短時間で、当該分野の知識を
ザッと覚えるにはかなり使える本のようだ。
●この本の中でオヤッと思ったのは、
最近発掘された最古の「老子」のテキストによれば、
世によく知られた「大器晩成」という言葉は
本来、「大器免成」の綴りが正解だったということ。
つまり、「大器は晩年になってから完成する」のではなく、
成ることを免れる、
つまり、「大器は最後まで出来上がらない」ということが
正しい意味だったというのだ
(「晩」と「免」では、字形としては、
日篇があるかないかだけの違いで、
確かに間違いやすい)。
この新しい学説は大変興味深い。
安易なもの、世俗的成功、自己顕示欲などを
ことごとく嫌った、いかにも老子らしい言い方である。
マメ知識として覚えておくとよいでしょう。
【マストポイント】
@「怨みに報いるに徳を持ってす」、
「天道は親(しん)無し、常に善人に与す」、
(天の道にえこひいきはなく、常に善人に味方する)
「夫れ惟だ争わず、故に天下能く之と争うは莫し」
(そもそも自分を立てて人と争わないから、
世界中に聖人と争うことが出来る人はいないのだ)。
「金持ちケンカせず」とはよく言われる言葉だが、
聖人も争いごとを好まない。
争いを避け続け、自分を下に下に置いておくようにするから、
逆に、最終的には、上の方に引き上げられるようになるし、
自分の目的も達することが出来る。
A「知る者は言わず、言う者は知らず」。
ベラベラと喋ってばかりいる饒舌な人間は
実際は何もわかっていない。
逆に、真の賢人は、ほんの一言二言、
ボソッと喋った言葉で、物事の本質をズバリと言い尽くす。
物知り顔で喋っても、自分より詳しい知識人が
世の中必ず存在する。
どっちしろ、余計なおしゃべりをしないで、
口を閉じている方が、無用な恥をかかず、
大過なく過ごせるということだ。
B「我に三宝あり、持して之を保つ、
一に曰く慈、二に曰く倹、三に曰く敢えて天下の先に為らず、と」。
「三つの宝」を常に抱いているから、
無事に生きることが出来る。
慈悲の心があるから、人から信頼されて逆に勇敢でいられる。
倹約の心があるから、いざと言う時に人に施しもできるし、
危急の時も、蓄えがあるのであわてふためくこともない。
でしゃばって人の先に立とうとしないから、逆に
人材をうまく登用して、首領となることができる。
この三宝がなければ、どんな人でも、
安泰に生きることはできない。
【著者略歴】
蜂屋 邦夫
1938年、東京都荒川区生まれ。東京大学教養学部卒業、東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。文学博士。東京大学東洋文化研究所教授を経て、大東文化大学国際関係学部教授、東京大学名誉教授。専門は中国思想史、道教思想史。






