必読本 第612冊目
あなたに金持ちになってほしい
ドナルド・ トランプ(著), ロバート・キヨサキ(著)
¥ 2,310 (税込)
筑摩書房
単行本: 405ページ
2008年1月25日 初版
●お金の問題を解決するのはお金ではなく、
ファイナンシャル教育をおいて他にはない。
不動産王トランプと「金持ち父さん」のキヨサキが、勝利の方程式、
そして人生のアドバイスを贈る。
●『金持ち父さん』シリーズ待望の最新刊。
シリーズ近作(必読本第冊448目参照)でチラリと予告されていたように、
あの不動産王ドナルド・トランプ氏との共著である。
えげつないぐらいに直截的な書名だが、
昨今のビジネス本の中でも、
特に心を打つ出色のタイトルだと思う。
●言うまでもなく、両者は不動産事業のみならず、
出版事業、テレビ番組制作事業、教育事業で
「超」がつくほどの大成功を収め、おそらくは
一生食っていくには事欠かないほどの巨万の富は
既に築き上げているはずである。
普通の考えだったら、とうの昔に第一線から退き、
頭を悩ますことの多い俗世間から離れて、
どこか南国の楽園ででも隠遁生活を送ってもよさそうなものだ。
●だが、両者はそんなことはしない。
なぜなら、世界経済の長期低迷状態、
先進国で顕著に広がる格差社会、
雇用の海外流失など、
多くの問題に関してとても「心配している」からだという。
本書で示されているように、
10%の金持ちが世の90%の富を握り(10対90の法則)、
その10%の人々の割合がドンドン1%に縮小し、
90%の富は逆にドンドン99%に近づくのではないかと危惧している。
両者ともに、自分が大成功したことだけに充足せず、
やる気のある人ならば誰にでも「金持ちになってほしい」と
真剣に望んだことが、本書を出版した理由であるとのこと。
●例によって、国や会社の庇護をあてにせず、
主体的にファイナンシャル教育を積み、
投資を行って富を築いていくことの大切さが
全篇にわたって強調されている。
『金持ち父さん』シリーズを総括するかのように、
今までの本の重要ポイントが図表やドリルを使って
復習的にまとめらていて、
「はじめの1冊」として読む初心者にも十分理解可能な
作りになっています。
魂を鼓舞する啓発的な部分と、
投資や財務上の知識、テクニックを教示してくれる部分が
絶妙なバランスを保って1冊に凝縮されている傑作で、
毎度のことながらその手腕にはホレボレさせられる。
●トランプ氏に関して一言コメントしておくと、
私自身、氏の本は1冊も読んだことがなくて、
正直、どんな人間像なのか全く知らなかった。
年齢のわりに異常なぐらいに髪がフサフサで、
この人絶対にヅラだよ!と思われる写真が冒頭にあり、
どこぞのタチの悪い地上げ屋か、
血も涙もない金の亡者のごとき人物が出てくるのかと、
相当警戒はしていたのだが、
キヨサキ氏に勝るとも劣らないぐらいに
マインドが高く、かつ、投資蓄財に関するアドバイスは切れ味鋭いものがある。
●利にさといはずなのに、利己的ではなく、
冷静沈着なのに、冷酷ではない。
完全に先入観を覆された。
やはり、日本のヒルズ族あたりのにわか成金などと違い、
アメリカを代表する実業家は器がでかい。
本書を読んで、キヨサキ氏以上にファンになる方は続出するはずだ。
●シリーズの中で新しい試みとしては、
写真が大変多いということである。
別人か?というぐらいにスリムになった
キヨサキさんの顔写真に驚かされることから始まり、
実父である「貧乏父さん」を含めた家族写真、
スポーツ好きだった学生時代、
心身ともに鍛えに鍛え抜かれた兵隊時代、
そして、キヨサキ、トランプの仕事を周囲で支える
スタッフたちの写真など、
実に数多くの写真が掲載されていている
(ただ、誰もが知りたい「金持ち父さん」の写真は
今回も実家族の反対などがあったのだろう、
掲載見送りになったのは残念至極である)。
後半には、人生相談的内容、
両親、学校、スポーツ、軍隊、ビジネスから何を学んだか?を
回顧する話など、両者の自伝的内容になっていて、
単純に成功者の物語として読んでも面白い。
●文庫本のような細かい字がビッシリ、なおかつ
400ページの分厚さで、やはり誰もが一瞬はたじろぐ。
だが、内部情報はやはり濃いので、
数日間の余裕をあらかじめ確保して、
2時間で100ページぐらいのペースで
熟読玩味したい本だ
(参考までに、私は読了まで4日かかりました)。
●毎度のことながら、
キヨサキさんの本の完成度の高さには
ホトホト感心させられます。
定価2,310円(税込み)だが、1,365円ぐらいのビジネス本
10冊分ぐらいの密度、情報量は備えている。
類書を全部脇にどけても、真っ先に読むべき価値はありますよ。
【マストポイント】
@魚を与えれば、その人を1日食べさせることができる。
漁の方法を教えれば、その人を一生食べさせることができる。
A言い訳を並べる代わりにできることで一番いいのは、
ほんの少し努力をすることだ。
みんなが、今まわりで起こっていることを理解しようと努め、
自分を一段階レベルアップさせて、より次元の高い、
現状に甘んじない人間になるために努力をすれば、
きっと何かしら明快な答えが出てくるだろう。
問題を解決することは、あなたにとって最良の教育になりうる。
理解することで憎しみがなくなるように、
教育を受けることで恐怖をなくすことができる。
(ドナルド・トランプ)
B「使命」はビジネスの最も重要な部分だ。
ビジネスの魂であり、その中心である心だ。
魂と心がない起業家は(たとえ素晴らしい商品を持っていても)
大体失敗する。(ロバート・キヨサキ)
【著者略歴】
ドナルド・トランプ
1946年ニューヨーク市クイーンズに生れる。28歳のとき独立し、マンハッタンへ進出。1975年、グランド・セントラル駅に隣接する、老朽化が著しいコモドア・ホテルをよみがえらせることを計画し5年後にグランド・ハイアット・ホテルといてオープンする。1983年には「世界一豪華なビル」トランプ・タワーを五番街に建て、全米の話題を呼ぶ。不動産デベロッパー、ホテル経営者としての他にカジノ経営でも成功をおさめ、いまや資産は30億ドルを超えるといわれる。アメリカを代表する不動産王である。
ロバート・キヨサキ
日系四世ハワイ生まれ。ハイスクール卒業後、ニューヨークの大学へ進学。大学卒業後は海兵隊に入隊、士官、ヘリコプターパイロットとしてベトナムに出征した。帰還後の1977年、ナイロンとベルクロを使ったサーファー用財布を考案、会社を起こした。この製品は全世界で驚異的な売上を記録し、『ニューズウィーク』をはじめ多くの雑誌が、ロバートとこの商品をとりあげた。1994年に47歳でビジネス界から引退した。今やっているのは、投資と教育だ。「持てる者」と「持たざる者」とのギャップが広がることを憂えて、ボードゲーム『キャッシュフロー』を考案した。これは、それまで金持ちしか知らなかった「金儲けのゲーム」のコツを教える教材だ。このゲームはアメリカで特許権を得ている。お金に関する教育、経済動向についての講演は高く評価されている。
シャロン・レクター
妻であり三児の母であると同時に、公認会計士、会社のCEOでもあるシャロンは、教育に関心が深く、多くの力を注いでいる。フロリダ州立大学で会計学を専攻し、当時全米トップ・エイトに入る会計事務所に入所。その後もコンピュータ会社のCEO、全国規模の保険会社の税務ディレクターなどへと転職し、ウィスコンシン州で初の女性雑誌の創刊にもかかわる一方、公認会計士としての仕事を続けてきた。
金持ち父さん貧乏父さん 公式サイト http://www.richdad-jp.com/top.html