2008年05月09日

必読本 第669冊目 新釈韓非子―大人のための中国古典

必読本 第669冊目

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新釈韓非子―大人のための中国古典

守屋 洋(著)

¥1,050(税込み)

PHP研究所

新書:222ページ

2002年4月30日 初版



●人間の実相、権力の本質を見据えた不朽の古典「韓非子」。

組織を合理的に操る最強の管理学をここから学べ!

1984年刊「韓非子」の改題改訂。

●先日ご紹介した、

中国故事成語の本(必読本第667冊目参照)の中では、

なぜだか知らないが、

『韓非子』の言葉が私自身の心に響くものが多かった。

今まで、その本を、

一度も腰を落ち着けて読んだことがなかったので、

ゴールデンウィーク中、特に予定もなくヒマだったこともあり、

図書館から借りて、そのエッセンスを学んでみることにしました。

●『韓非子』の理論を素人なりに簡単にまとめると、

孔子などが主張する「仁」の教え、性善説とは全く対極の、

人間不信、性悪説の立場に立つ思想である。

人というものは、利己的で、他人の言うことを聞かない。

隙あらば、金は盗む、悪口陰口は言う、酒や女やバクチなどの

快楽に溺れ、真面目に働こうとしない。

我が身の保身ばかり考え、他人が不幸になろうがなるまいが、

そんなことは一切関係ない。

そういう、どうしようもなくワガママで、自己中心的、

実に信用できない存在なのである、という大前提に立っている。

●ちょっとした油断や、人間観察の不徹底、

上司への失言などで、命まで無くすような

混沌した時代に生まれた書なのである。

『論語』を、キレイごとを並べた学校の道徳教科書だとしたら、

『韓非子』は、現実世界をうまく生き抜いていくための

渡世の書、裏マニュアル本と喩えてもいいだろうか。

多民族国家で、人よりも法、契約を重んじる、

一歩間違えば銃で撃ち殺される危険性があるアメリカなどでは、

中国古典の中で、『孫子』と並んで、人気が高いというのも頷ける

●全体は、

「◎現実を生きる人間学◎リーダー学の要諦

◎部下を操縦する7つの心得◎組織管理の6つのポイント

◎トップが自滅する10の原因◎仕える側の論理」の

6章に分けられる。

それぞれの章ごとに、『韓非子』の中から

エピソードを抽出し、そこからどのような教訓を

得られるのか、筆者の守屋さんが解説文を付けるという

配置になっている。

イソップ物語のような寓話ばかりが出てくるので、

難解さもなく、面白く読めると思う。

原文など、余計なものを極限まで削ぎ落とし、

読みやすさに徹しているのも評価したいところ。

●私なども、基本的に、人間というものは

善なる存在だと思いたい方なのだが、

そんな理想主義的な生き方では、

足元をすくい取られかねない物騒な世の中である。

権謀術数を使う悪い輩の軍門に下りたくない、

暖かな心を持ちつつも、冷徹な観察力で

他人を判断し、人生を無事に渡り切って行きたいと

お考えの方にはお勧めしたい本です。

●ほんの6年ほど前の本だが、

メジャーな中国古典ではなかったせいか

それほど売れなかったのだろう。

既に絶版になってしまって、ありえないプレミアがついている。

ブックオフの新書コーナーなどを丹念に探すと

出てくる可能性があるので、

興味ある方は頑張ってゲットしてみて下さい。


【マストポイント】

@「トップは心の中を見せるな」

会社の社長が日本酒が好きだと公言すれば、

それに取り入ろうとする部下や取引先は、

こぞって日本酒ばかり贈り物として持参するだろう。

ゴルフは嫌いだと公言すれば、

社長の機嫌を損ねないように、回りの者は

一切そのことを口にしないだろう。

つまり、トップが好悪の感情をあからさまにすると、

その足元をすくおうと考える者たちに、

格好の材料を与えることになるのだ。

トップが物の好き嫌い、喜怒哀楽をあからさまに示さず、

常にゆったりと構えていれば、

回りの部下たちはその生地を表す(本性を表す)。

部下たちがその生地を表せば、

トップは目をくらまされることがない。

A「水は弱々しく見えるから、溺死者が多い」

火は見るからに激しい印象を与える。よって、

それを怖がって、焼け死ぬ者は少ない。

しかし、水は見るからに弱々しい印象を与えるので、

与し易しと思って、かえって溺れ死ぬ者が多い。

なよなよとした弱気の態度でいると、

人民はなめてかかって風紀が乱れる。

為政者は、常に厳しい態度でいることが

まず大事だ、というたとえ。

B「端を見て末を知る」

王様が象牙の箸を作った時に、

側近が、将来の没落を予想した

(ひとつ贅沢な物を身につけてしまえば、

それに合うように次々と贅沢品を買い揃え、

富への欲求が止まらなくなるから)。

すぐれた人物は、かすかな兆候を見ただけで

物事の動きを察知し、

わずかな手がかりを得ただけで物事の顛末を予見する。


【著者略歴】

守屋 洋
著述業、中国文学者。昭和7年、宮城県生まれ。東京都立大学院中国文学修士課程修了。現在、中国文学者として、著述、講演等で活躍中。

ラベル:韓非子
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