必読本 第686冊目
勝間式「利益の方程式」 ─商売は粉もの屋に学べ!─
勝間 和代(著)
¥ 1,575 (税込)
東洋経済新報社
単行本(ソフトカバー): 278ページ
2008年4月17日 初版
●著者考案の「万能利益の方程式」を活用し、
あらゆる会社の利益を最大化する方法を解説。
サラリーマンでもわかる利益の作り方勉強法。
●今最も話題のビジネス本著者
勝間和代さんの最新刊です。
モノ余り、ライバルひしめくビジネス環境において、
ちょっとした値付けの失敗、
先読みを間違えて過剰に商品を生産したり、
在庫を抱えたりしてしまって、
大失敗してしまった経験がある方は少なくないでしょう。
また、売上げはしっかりとあるのに、
経費ばかりがやたらとかかって、サッパリ儲けが残らないという
事態に頭を抱えている方も多いはず。
本書は、どの業種でも汎用的に使える
「利益」の出し方を解説した本です。
●帯にもドーンと載っている「万能の利益の方程式」
「利益=(単価−獲得コスト−原価)×顧客数」の
ひとつひとつの項目を要素分解して、
実に事細かに解説していってくれます。
どうしても我々素人は、
儲けや利益などいうものは、売値から仕入れ値を
引いたものだなどと、非常に単純化して考えがちだが、
各項目の注意点、目の付け所を
金融のプロの視点から、具体的かつ懇切丁寧に
解説していってくれます。
今までドンブリ勘定でやってきた方には
間違いなく勉強になる本です。
●また、例によって文章は大変読みやすく、
各種の図表類も豊富です。
280ページの分厚さにもかかわらず、
一気に読破できます。
大変ボリュームがある本なので、
読んだらそれっきりになりがちですが、
最終第8章では、本文すべてのポイントが
一気にまとめられておりますので、
ここだけでも最後に重点的に復習しておきたいものです
(ただ、サブタイトルは、本書の全体像から見て、相応しくない。
本書を読めばわかるが、もっと他のものが好ましかった)。
●例によって、無数の読書と、
最前線での豊富な職業経験から裏打ちされた
その情報量のすごさには圧倒されます。
この出し惜しみをしない太っ腹のよさが
著者最大の人気の秘密でしょう。
この1冊を書き上げるまでに要した、著者の時間、費用など
労力を総合的に考えると、定価1,575円は
大バーゲン価格と言ってもよいですね。
●一つひとつの意見が単なる思い付き、勘ではなく、
数字やデータなど、しっかりとした論拠を示すところが、
いかにも公認会計士、経済評論家らしく、
非常に説得力を持たせている。
本書においては、ケータイ、ゲーム機など、
我々に馴染み深い業界を数多く例示しているのもいい。
巻末には、お馴染みの、推薦書の紹介もあります。
●ただ、あまりにも微に入り、細を穿つその隙のなさ、
有無も言わせぬその精緻な分析力、
ギュウギュウに詰め込まれたその理論の膨大さには、
息苦しさを感じる読者がいるかもしれない。
つまり、勝間さんの本の内容は文句なく素晴らしいのだが、
理論があまりにも先走り過ぎて、実践が追いつかないというか、
そっくりそのまま本書の内容を
ごく一般的な読者が真似できたらいいのだけど、
あまりにも量が多すぎて、それはとても無理だ、
というある種の徒労感を、読後どうしても持ってしまうのだ。
●勝間さんはあまりにも知的レベルが高く、
この手の「できる人」というのは、
どうしても、万巻の書に通じているせいか、
何でも「できる」のが当たり前だと考えがちで、
大多数を占める我々「できない人」から見れば、
あまりにも突っ走りすぎというか、
とても手の届かない神のような高みから、
ご高説を述べているような印象もなくはない。
●人を見下したような傲慢な物言いが
ほとんどないのが救いだが、
何か即物的、金銭至上主義的な姿勢が強まったり、
経歴や収入など、自慢話がやたらに展開されると
(本書でも、自画自賛がどうしても鼻につく。
読者は優れた知見だけを求めるために本を読んでいるので
あって、著者の自慢話など誰も望んでいない)、
「出る杭は打たれる」のことわざどおり、
徐々に読者離れを起こすのは必至である。
優秀な作家であることは確かなので、
もうちょっと人間臭い失敗談を混ぜた方が、
長く受け入れられるような気がするのだが、大きなお世話だろうか
(よく負けるが、素っ頓狂なパフォーマンスがある力士(例・高見盛)の方が、
精密機械のようにほとんど負けない横綱(例・現役時代の北の湖)よりも
人気があるようなものである。
非の打ち所の全くない、完璧な超優等生は、逆に疎んじられる。)
【マストポイント】
@勝間式万能利益の方程式
利益=(顧客当たり単価−顧客当たり獲得コスト−顧客当たり原価)×顧客数
【原則1】 顧客単価を一円でも二円でもバカにせずにコツコツと
引き上げ、戦略のない値下げはしない。
【原則2】 しっかりと顧客獲得コストを計算して、口コミ等、
なるべく顧客獲得コストが安くなるチャネル、手法を活用する。
【原則3】 顧客原価を、顧客が感じる価値を損なわないように
しながら、限りなく小さくすること。
【原則4】 顧客の普及率に伴ったステージを意識し、
市場と対話しながら、施策のメリハリをつける。
A「成功とは、成功するまで仮説→実行→検証を
繰り返すことではないかと思います。」
(問題解決のためには、ビジネスでも、私的なことでも、
このプロセスを愚直に繰り返すことが非常に大事だと述べている)
B「儲けというのは、顧客の感謝の表れなのです。
健全な儲けがないと、私たちは顧客に対して継続して
品質の高い商品・サービスを提供することができません。
私たちの社会では残念ながら、一人ひとりの顧客と
会話することはできないのですが、
顧客の感謝の代理変数が金銭の支払いであり、
その多寡をもって、顧客の満足度を間接的に測ることが
できます。
つまり、商業取引は金銭を通じた顧客とのコミュニケーション
なのです。」(本文より。一部改変)
【著者略歴】
勝間和代
1968年東京都生まれ。経済評論家、公認会計士。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得。以後、アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。2005年、『ウォールストリート・ジャーナル』から、「世界の最も注目すべき女性50人」に選ばれる。三女の母。著書に『決算書の暗号を解け!』(ランダムハウス講談社)、『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』『無理なく続けられる年収10倍アップ時間投資法』(以上、ディズカヴァー21)、『マッキンゼー 組織の進化』(共著、ダイヤモンド社)などがある。ブログ「私的なことがらを記録しよう!!」 。
勝間和代さん 公式ブログ http://kazuyomugi.cocolog-nifty.com/