必読本 第688冊目
下流社会マーケティング
三浦 展(著)
¥ 1,470 (税込)
日本実業出版社
単行本(ソフトカバー): 172ページ
2006年2月10日 初版
●下流社会化がすすみ、2005年体制は階層化の時代へ。
「標準家庭」が減少、高齢化していく。
消費トレンドはどう変わるの?
時代のデザイン力とは?
階層化と世代マーケティングの具体的でわかりやすい入門書。
●世間で売れまくったベストセラーに後追いするのが嫌で、
どうしても、ずっと読まずに取りこぼしてしまう本が
あるのだが、本著者の『下流社会』(光文社)もそうであった。
先日紹介したばかりの勝間和代さんの最新刊
(必読本第686冊目参照)でも推薦されていたので、
その本は依然未読なのですが、
先に本書を読んでみることにしました。
●いかにも勝間さんが好みそうな、
各種のデータ類、図表類が豊富な本である。
前半は、人口統計学、消費動向を
概観した話にほぼ終始する。
右ページに各種の図表を載せ、
左ページにその解説文を掲載するシンプルな構成。
何か、新聞の解説欄を読んでいるような、
平板な内容が続くが、
日本経済の基本的な動向があやふやな方には、
それなりに役に立つことでしょう。
●アマゾンのレビューでは批判が殺到しているようだが、
私はそれほどひどい本ではないと思う。
総中流化社会から下流化社会に変わってきていること。
同世代であっても、階層化が進み、たとえば、
団塊世代は8種類に分けることができる、
その団塊世代の子供は、ニセ団塊ジュニアと真性団塊ジュニアの
2種に別れ、世代が近接しているが、
微妙にメンタリティが違う、
そして、各階層ごとの特徴をつかんで商品開発を
しなくてはならない、などということが
新しい知見として得られる。
●最終章の、著者が関わった
日産キューブ、スズキラパン、トヨタウィッシュ、bBなど
ヒットした車種の開発裏側を
解説した箇所は非常に参考になります
(特に、生活水準意識が低くて、生活満足度が高い人が
キューブを買い(自分で使えるお金が比較的に多い
パラサイトシングル男性)、
前者が高くて、後者が低い人がウィッシュを買う
(早めに結婚して一戸建てを購入したばかりなど、
収入は多いが、生活にあまりゆとりがない既婚男性)という
話は非常に面白かった)。
車好きならば一読に値するし、
これから、若者相手のヒット商品を目論んでいる
異業種の方が読んでも、ヒントになるでしょう。
【マストポイント】
@「中流」を狙って、「上流」も「下流」も取り込む時代は終焉した
(総中流社会の時代に、上流にも下流にも人気があった
コロナ、ブルーバードは既に役目を終わり、名前が消えたものもある)。
「上」を狙ってものを作ると、「中」がついてくる
(ロレックス、オメガなどの高級腕時計は、
中流も下流も普通に購入するようになった)。
「下」向けの商品を作っても、「中」、「上」がついてくる
(100円ショップ、ユニクロなどは万人に受け入れられている)。
つまり、現代は、「上」と「下」を狙って、「中」も取る時代である。
A「デザインが良ければ、多少性能が悪くても仕方ない」とか、
「性能がいいんだから、デザインは犠牲になっても仕方ない」という
トレードオフ的考えでは、これからの時代はやっていけない。
ソニーは、デザインは良かったが、故障が多かったことが原因で
低迷していったことを考えればわかるように、
これからはデザインも性能も両立して高いレベルの商品を
開発していかなくてはならない(代表的な成功例・i-Pod)。
デザインがよければ、多少高くても買うという
階層は必ず存在する。
B団塊の世代(1948年)、
その子供であるニセ団塊ジュニア世代(73年)、
真性団塊ジュニア世代(78年)、
団塊の世代の後に続く、新人類世代(63年)、
その子供である新人類ジュニア世代(93年)と、
ほぼ15年周期で世代はガラリと入れ替わる。
近接した、ニセ団塊ジュニア(慎重、堅実、ベーシック、いやし、シンプル、
目立ちたくない、上品、上質、飽きがこない)と
真性団塊ジュニア(現状肯定、自己最適化、自己関与性、
リラックス、デザイン、レトロ、ミックス、レア、空間居心地重視、)
でも、全く特徴は違う。
その世代の特徴にピンポイントでマッチした
商品開発を行わないと、ヒット商品は生まれない。
【著者略歴】
三浦 展(あつし)
株式会社カルチャースタディ―ズ研究所代表。マーケティング・アナリスト。消費社会研究家。1958年生まれ。一橋大学社会学部卒業。(株)パルコ入社。マーケティング情報誌「アクロス」編集長を経て三菱総合研究所入社。99年、消費・都市・文化研究シンクタンク「カルチャースタディ―ズ研究所」設立。団塊ジュニア世代、団塊世代などの世代研究をベースに、自動車、家電、食品、化粧品などの商品企画、デザインに関わる調査を行う。