
影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣
N.J.ゴールドスタイン (著), S.J.マーティン (著),
R.B.チャルディーニ (著),
安藤 清志 監訳 (翻訳), 高橋 紹子 訳 (翻訳)
¥2,100
誠信書房
単行本:288ページ
2009年6月8日 初版
●『影響力の武器』の6つの原理を実社会で活用した50余りの事例を、
ユーモアを交えて描く心理学書。
人や組織から同意と承諾を得る方法を、
社会の場面にあわせて個別具体的に解説した。
世界の名だたる企業の販売戦略、リーダーシップの獲得術など、
人が人から協力してもらう方法をあらゆる角度から分析し、
実験に裏打ちされた方法論をもとに紹介。
成功は失敗談の中にこそある。
●人が、商品購入などの際にYESと説得されてしまう原理を
科学的に実証した名著『影響力の武器』
(必読本 第12冊目、第519冊目参照)の実践例を集めた本。
3人の著者のうちの前2人は、チャルディーニ氏のいわば弟子で、
師がまとめあげた6つの原理が、現実のビジネスや生活において、
どのように巧妙に実践、応用されているのかを、
豊富な実験例、データを集積して、ユーモラスな文体で解説する。
●大学のテキストで使われるような、無味乾燥でやや難解だった
元本と比べ、本書は非常にとっつきやすい内容で、
翻訳文が優れていることもあり、読み始めれば一気に読める軽妙な文体です
(ただ、細かい文字がビッシリと詰まっていて文章量は比較的多めである)。
取り上げられている実践例も、スター・ウォーズ、コカ・コーラ、
ハリー・ポッター、O・J・シンプソン事件、SARSなど、
最近のテーマが多く、専門書を読んでいるような退屈さを全く感じさせない。
実践例が50のケースに独立して紹介されているので、
ヒマな時に細切れで読んでも構わない。
●読破後、改めて痛感させられたのは、
人間というものは、自らは全く自覚していなくても、
本当に些細な事に影響されて、コロリと
商品購入、説得されてしまっているという恐ろしい事実である。
根拠となる実験データがきちんと記されているので、
嫌でも信じざるを得なくなります。
●下のマストポイントに、特に興味深かった事例を3点だけ挙げましたが、
他にも、レストランで置いてある臭い防止のキャンディーの配り方一つで、
ウエイターのチップの額が歴然に違うという話、
ホテルや公園で、遺跡盗掘防止やエコへの参加を効果的に促す方法、
最優秀なリーダーが独断で下した判断よりも、
複数の下位の人間が協力して下した判断の方が優れているという話、
韻を踏むことは、記憶に残りやすく、なおかつ人の賛同も得られやすいという話、
人は、得られるものより、失われるものによって行動が駆り立てられるという話、
企業名でも論文でも、シンプルでわかりやすいものの方がウケが良いという話、
コーヒーのカフェインには、人を説得させてしまう魔法の効果があるという話など、
刺激的な話がオンパレードで紹介されております。
●以前も記しましたが、本書と元本を読破後は、
特に、商品開発、セールス、接客業をやられている方は、
仕事への取り組み方や他人を見る目が一変してしまうことでしょう。
人と交際する時の注意点、喋る時や文章を書く時のポイントなど、
非常に多面的に応用が利く本で、
どんな人が読んでも、得るところの多い内容です。
アマゾンの書評にもありましたが、本書を起点に、
色々なアイディアを考え出したり、実験してみたりするのも
面白いでしょう。
やや高価な本ですが、本棚に常備して、
スランプ状態の時に現状打破の特効薬として使いたいような本です。
【マストポイント】
@名前、趣味、出身地、出身校が同一だったり、類似していると、
親近感を覚え、同意してしまう傾向が高い。
また、相手のしぐさや言葉をそっくりそのまま真似すると、
同意や共感を得ることが非常に簡単になる
(人は、自分に類似しているものに親近感を抱く)。
A1個も押されていないスタンプカードを渡されるよりも、
既に何個かスタンプが押されているスタンプカードをもらった方が、
お客は最後までスタンプを集めようとする傾向が強い
(全くゼロの状態よりも、既にスタートしているものの方が、
最後までゴールしようとする意思が働きやすい)。
B防犯カメラなど設置せずとも、ただその場の当事者が
映る鏡を置くだけで、不正を防止するのに有効である
(鏡には、一般に考えられている以上の魔術的な効果がある)。
(以上、本文の内容を元にブログ作者がまとめた)
【著者略歴】
ノア・J.ゴールドスタイン
Ph.D.。現在UCLAで教鞭をとっており、その学術研究および著述は心理学、ビジネス分野の多くの主要学術誌で取り上げられている。彼はまた、国立科学財団、国立衛生研究所などの米政府機関から研究奨学金や助成金を授与されたほか、アクセンチュア社、農務省森林局、商務省国勢調査局といった多数の企業、政府機関の顧問を務めてきた
スティーブ・J.マーティン
共著書『影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣』で紹介される戦略に基づいた研修、コンサルティングサービスを提供しているインフルエンス・アット・ワーク(UK)の所長。販売、マーケティング分野での経験が豊富で、彼の論説はさまざまな業界誌、全国紙でたびたび取り上げられている。世界中で講演を行い、トレーニングを実施している。英クランフィールド大学、ロンドン・シティ大学(サー・ジョン・キャス・ビジネススクール)などの多くの経営学大学院で影響力や説得をテーマにたびたび発表を行う一方、さまざまな企業、政府機関の顧問を務めている
ロバート・B.チャルディーニ
現在アリゾナ州立大学で心理学およびマーケティングの指導教授を務めている。影響力と説得に関して世界で最も多く引用されている専門家であるとともに、100万部を超える売上を記録した草分け的作品『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』の著者でもある。その研究はさまざまな学術およびビジネス専門誌に掲載され、実業界や政府からも注目を集めている。2003年に、社会心理学分野での傑出した功績により、アメリカ性格・社会心理学会よりドナルド・T・キャンベル賞を授与された。